MIT Technology Reviews記事「崩壊する『経済成長』神話、資本主義の危機をテクノロジーは救えるか」が興味深い。

新型コロナによって世界経済は大きな打撃を受けたが、それ以前から資本主義は危機に瀕していた。人々は資本主義の基本的な考え方である「経済成長」に疑問を持つようになっているという。

 

https://www.technologyreview.jp/s/222133/capitalism-is-in-crisis-to-save-it-we-need-to-rethink-economic-growth/

 

・米国や欧州の人々の多くが、資本主義を支えているいくつかの柱に疑問を呈し始めたのも無理はない。とりわけ、自由市場への盲信と、経済成長が人々に繁栄をもたらし問題を解決してくれるという確信が揺らぎ始めているという。

 

・経済学者たちの確信を揺るがしている明らかな要素の一つは、経済成長が何十年にもわたってひどい状態にあることだ。こうした経済的不調には例外もある。1990年代後半や2000年代初期の米国や、中国など開発途上国が競って追いつこうとしていた時期だ。だが学者の中には、世界の大部分において成長が遅い事態が新しい日常であり、これは一時的な減速ではないかもしれないと認識するようになっている者がいる。代表的なのは、ロバート・ゴードンで、2016年に出版された著書『アメリカ経済 成長の終焉(原題:The Rise and Fall of American Growth)』は、経済について多くの省察がなされるきっかけとなったという。

 

・成長が遅いことは、少なくとも先進国においては全く懸念に値しないと、ヒューストン大学の経済学者であえるディートリク・ボルラス教授は述べている。成長が遅いことは、概ね出生率が相対的に低くなったこと(労働力が減少すれば生産量は減少する)と、先進国の消費者の需要により一層応えるためにサービスへの転換が起こったことの結果である。いずれにせよ、成長が遅いことを変える方法はほとんどなく、人々は遅い成長を受け入れたほうがよい。「成長が遅いのは当然であり、そういうものなのです」とボルラス教授は述べている。

 

・マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学者であるダロン・アシモグル教授は、我々の最も切迫した問題を解決するのに必要なテクノロジーの創出を目標とする「新成長戦略」の必要性を呼び掛けている。アシモグル教授は、今日の成長を、デジタルテクノロジーや自動化、人工知能(AI)に専心する大企業がけん引するものであると述べている。いくつかの支配的企業にイノベーションが集中していることが、不平等につながり、多くの人の賃金上昇の停滞につながっているという。

アシモグル教授によると、シリコンバレーの人々は、このことを問題であると認めつつも「これはテクノロジーが望んでいることであり、テクノロジーの進む道程なのです」と主張しているという。だが同教授は、どのテクノロジーを発明し活用するかを我々は意図的に選択していると指摘し、この主張を退ける。

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁