<ズームバック×オチアイ 特別編>コロナ禍の「半歩先」を未来予想『落合陽一、オードリー・タンに会う』のNHK番組(10.03)が非常に興味深かった。

日本のNHKスタジオにいる落合陽一氏からの質問(日本語)に、台湾の執務室のオードリー・タン氏が英語で回答(放送時は日本語の字幕。長い回答の際には日本語吹き替え)する形で同時通訳で3時間にわたって対談が行われたようだ。

以下転載するが、話題は大きく分けて、ファッション(ココ・シャネル)、経済(ケインズ)、政治(新しい民主主義)。

 

https://yoichiochiai.wiki/2916/#NHK0000

 

 

・オードリー・タンのプロフィール:

台湾のIT担当閣僚。トランスジェンダー、8歳~プログラミングを独学、15歳「Fusion Search捜尋快手」1か月で1万ユーザー→電脳神童、19歳で渡米し人工知能siri(Apple)の開発、35歳 IT担当閣僚に。新型コロナ流行初期の2020年2月、台湾中のマスクの在庫データを可視化できるアプリを開発し台湾の感染を限定的な物に収めた。世界が注目し取材が殺到しているらしい。

 

・(今年1年を表す「一文字」は?)

唐鳳:

(紙に描いた円を見せながら)「中国語でもアラビア語でも他の国の文化でも同じように書くこの文字。もし1なら漢字なら横の棒『一』、他の文化なら縦の棒『1』になる。ゼロは回転しても同じ、地球の皆が同じ原点を共有したということで『0』を選んだ。」

 

 

「今まさに「境」がどうなるかが問われている。今は自分と他の人の間にマスクで境界線を作らないといけない。手から体内にウィルスを吸収しないために、自分の顔と汚れた手の間にも境界線を引かなくてはならない。でもここで手を洗えばボーダー(マスク)を取り外すこともできる、これもテクノロジーだ。未来はどうなるか、テクノロジーで何ができるか。すべては『人』次第。」

 

・落合:

「人に見せるためのブランド品をわざわざ持ってパーティに行くか?そうじゃない時代が近づいている。『自律共生的な』=コンヴィヴィアリティ(哲学者・イヴァン・イリイチが説いた『共に生きる価値観』)がひとつのキーワードになるだろう。」

「さっきオードリーの言った『清貧(モディスティ)』。人も文化も虚栄心も、レジリエンス(弾力性:衝突や危機から回復する力)を持っている。今、清貧な状態に置かれたとしても人は虚栄を目指すかもしれない。導入された文化がどう維持されるまたはもとに戻っていくだろうか?」

 

・唐鳳:

「コンヴィヴィアリティは日本の侘び寂びにも通じる。余所から価値を輸入したり奪ってきたりするのではなく、今目の前にある環境を活かして共に生きて行こうという考え。人類は歴史上はじめて世界中が等しく同じ悩みを持つことになった。同じ環境・同じ文化を生きていると言える。時差・物理的距離の壁もインターネットが越えた。ひとつの新しい文化だ。人類は歴史上初めて、先進国と途上国という枠組みを超えて地球規模のコンヴィヴィアリティ(共生)を手にした以上、前に戻る必要はない。ワクチン完成後も地球規模で物事を考えていくべき。」

 

・落合:

「持続可能性は生産性指標では評価できない。例えば、自給自足で畑を耕しながら寺社仏閣を磨いて暮らしているとする。社会に接続されておらず通貨がやり取りされなければ、そこで行われる経済活動は0かもしれない。だが、その寺社仏閣が持続可能に保たれていれば、100年後その寺社仏閣を見た人からすれば、計り知れない価値に変換されるかもしれない。」

 

・唐鳳:

「これまでの経済では必ず物的資源・人的資源の搾取が行われる。デジタルの世界なら他の誰かを凹ませる必要がない。デジタルの世界は無限。皆が同じスタートラインに立てる。」

 

唐鳳:

「物理的にひとりひとりの意見を聞いて回るなら、古代民主主義が行われたギリシャの都市国家の規模が限界だろう。でもデジタルは違う。デジタルのネットワークはスケールフリー(1つの情報を無限に拡大・共有できること)だ。皆にとって価値があると判断された情報は、すぐに世界中に拡散される(東京都のコロナ対策サイトにプログラマーとして参加した事例を紹介)。ネットワークの中で民主主義的に導入されたアイデアは『スケールフリー』。どれだけ規模の大きな人口に対しても広がり続ける。このような新しい民主主義のやり方を広める上でも日本と台湾の距離は近い。物理的な距離の近さではなく、テクノロジーのレベルが同じくらい高いこと。進んだテクノロジーがあれば進んだ理想を叶えることができる。民主主義は完成された『化石』ではなく、『人の生活を便利にする生きたテクノロジー』」

 

・落合:

「『変わらないものって何だろう?』って僕はよく考えるんですよ。自然の形も変われば人の形も変わるけれど、その中で人の最もチャーミングなところはタンさんにとってどこですか?」

唐鳳:

「人は賢人(サピエンス)ですから、知恵ですね。」

・「単一民族の多い日本で生きた民主主義を進化させるカギは多様性であり、それには”ほどほど”のコンセンサス(合意)という視点が必要だ」と締めくくられる。この「ほどほど」は、デジタルトランスフォーメーションへ期待し過ぎないこととして、講演や対談番組にも出てくるキーワードのようだ。

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁