Toyota AI VenturesでLiaison Partner and VP, Corporate Developmentを務める、元TRIチーフ・リエゾン・オフィサーの Yas Kohaya(小早 康之)氏が、CVC成功の秘訣 戦略的リターンの罠について話している内容が面白い。

 

https://yaskohaya.wixsite.com/innovation/post/%E3%80%90cvc%E6%88%90%E5%8A%9F%E3%81%AE%E7%A7%98%E8%A8%A3%E3%80%91%E6%88%A6%E7%95%A5%E7%9A%84%E3%83%AA%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%BD%A0?fbclid=IwAR2V_X4KsVaumqZqlOxPuJ9d5rmndcSFKK2jkTtKKwg-OBSsB0YWDSU4oo4

 

・「日系企業がCVCを運営する際、うちのCVCは戦略的リターンが目的だからフィナンシャルリターンは追わないという声をよく聞く。私がToyota AI Venturesを設立する際に本社に説得に回った時も、またその後運営をし始めてからも役員から金儲けのためではないと釘を刺された。」

 

・「よく遭遇するのが本社のスタートアップへの傲慢な態度。特に成功している大企業だと自前主義が強いので、どうしてもこのスタートアップと付き合うと何が得られるの?、ちゃんとうちみたいな企業と付き合えるの?、品質は大丈夫なのか?、倒産したらどうするの?などといった上から目線でスタートアップに厳しい目を向ける。もちろんそれを無視しても良いという訳ではないが、急成長する有望なスタートアップは厄介な大企業と付き合っている余裕などない。」

 

・「通常、スタートアップは18ヶ月のランウェイ(現金)しかなくて、その間に投資家に約束した成果を出さなければ次のステージに進む事はできない。人も金もリソーセスもギリギリの中で技術開発を進め、顧客を開拓し、事業を軌道に乗せるためには毎日が戦いであり、生きるか死ぬかの恐怖に晒されながら邁進するのがスタートアップの宿命なのだ。だから投資家に対してはお金だけでなく、有望な人材の紹介から、ポテンシャル顧客の紹介から、技術・生産ノウハウなど、ありとあらゆる支援を期待する。投資家もリターンを最大化するために経営アドバイスなど惜しみなく支援を提供する。」

 

・「そんな中で、(特にアーリーステージのスタートアップの場合)本社との協業を強制されるなど邪魔者以外の何者でもなく、極力付き合いを避けたいというのが本音なのである。だからCVCも投資先スタートアップの目標にベクトルを合わせフィナンシャルリターン重視にならなければいけないのだ。」

 

・「外向けにはフィナンシャルリターン重視であることをアピールしなければ有望なスタートアップには巡り合えない。スタートアップコミュニティーというものはシリコンバレーであろうがイスラエルであろうが狭い世界で、良い評判も悪い評判もあっという間に広がる。あそこのCVCは無理な条件を突き付けてくるから付き合わない方がよい、などといった口コミは一旦広がるともう挽回はできないと覚悟しておいた方がよい。つまりCVC担当者としては、内向けには戦略的リターンをアピールし、外向けにはフィナンシャルリターンをアピールするという両面性をうまくバランスを取るしかない。この矛盾をどう両立するかは企業毎に事情が違うので明確な答えはない。しかし、本来であれば有望なスタートアップは、事業として成功する確率が高いのだからフィナンシャル・サクセスの確率も高く、結果的に戦略的リターンにつながると捉えるべきではないかと思う。CVCの真の目的は、投資先スタートアップを手厚く支援して企業価値を高め、成功したところで買収することで自社の新たな能力にする、ということであるはず。つまり大企業としてもフィナンシャルリターンを追求することは経営戦略的にも矛盾しないはずなのである。なのに、そこを理解せずに、CVCそのものを目的化としてしまったり、協業を引き出すため切り札のように使ってしまうから儲けてはいけないなどといった本末転倒なことになってしまう。」

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁