米人工知能学会(AAAI)の「スクワールAIアワード(Squirrel AI Award for Artificial Intelligence for the Benefit of Humanity)」の初代受賞者として、MITのレジーナ・バージレイ教授が選ばれたようだ。2014年に乳がんを患ってから、がんの検知と新薬開発のための機械学習アルゴリズムを専門に取り組んでいるらしい。

 

We’re not ready for AI, says the winner of a new $1m AI prize

「足りないのは、信頼」 100万ドルのAI賞受賞者バージレイ教授が語ったこと

(Will Douglas Heaven  米国版 AI担当上級編集者)

 

https://www.technologyreview.com/2020/09/23/1008757/interview-winner-million-dollar-ai-prize-cancer-healthcare-regulation/

https://www.technologyreview.jp/s/220148/were-not-ready-for-ai-says-the-winner-of-a-new-1m-ai-prize/

Rachel Wu / MIT CSAIL

 

・バージレイ教授のキャリアは自然言語処理(NLP)から始まったという。2014年に乳がんを患った同教授は、がんの検知と新薬開発のための機械学習アルゴリズムを専門に取り組むようになったという。

 

・アワード受賞者に贈られる100万ドルの賞金(ノーベル賞や、コンピューター科学分野におけるチューリング賞に匹敵する)は、中国のオンライン教育企業「スクワールAI(Squirrel AI)」が提供したものらしい。

 

・「蒸気から電気への移行期において、初期の段階では電気を産業に持ち込む試みはあまりうまくいきませんでした。なぜなら、単純に蒸気エンジンのコピーを作ろうとしていたからです。現在、AIでも同じようなことが起こっていると思っています。医療だけでなく、教育、材料設計、都市計画など、さまざまな分野にAIをどう組み込んでいくかということに取り組む必要があります。当然ながら、より良いアルゴリズムの構築をはじめ、テクノロジー側でも改善すべき点はあります。しかし、厳しい規制が敷かれた環境にAIテクノロジーを持ち込もうとしている中で、私たちはどのようにして持ち込むかについて真剣に考えては来なかったのです。」

 

・「現在AIが盛況なのは、失敗のコストが非常に低い分野です。グーグルが誤った翻訳やリンクを提示しても、さほど問題にはなりません。別の方法を試せばいいからです。しかし、医師の場合はそうはいきません。患者の治療や診断を誤れば、深刻な問題が起こるでしょう。実際のところ多くのアルゴリズムは、さまざまな物事において人間よりも優れた仕事ができます。しかし私たちは、自分が理解できないものよりも、自分の直感や心に信頼を置くものです。医師たちがAIを信じられるような理由を提供する必要があるのです。米国食品医薬品局(FDA)はこの問題に注目していますが、米国、そして世界のどこにおいても解決にはほど遠い状況だと思います。」

 

・「乳がんはとてもありふれた病気で、多くの患者がいて、データも膨大な蓄積があるのに、なぜそれが活用されていないのだろうと思いました。しかし、米国の病院のシステムから情報を引き出すことは簡単ではありません。データはありますが、テキストなのです。そこで私は、そのデータを利用するために自然言語処理を使い始めました。利用可能なデータを自ら捨ててしまっているというのは、他の分野では考えられないことでした。しかし医療の分野ではそれが起きていたのです。」

 

・(AIがいまだに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に大きな効果をあげていないのはなぜですか?)

「新型コロナウイルス感染症に対してAIがあまり有効に活用されていないのは、テクノロジーではなくデータの不足に主な原因があります。私は医療におけるAIを扱うMITの「Jクリニック(J-Clinic)」センターでリーダーチームに所属していますが、4月当時、私たちの多くは「何かしたいのだが、データはどこから得ればよいのだろうか?」と口にしていました。しかし、データは得られませんでした。不可能だったのです。半年経った今でも、どうすればデータを得られるのかは明確になっていません。」

 

「2つめの理由は、私たちに準備ができていなかったということです。たとえ普通の状況で、人々がストレスに晒されていなかったとしても、プロセスの中にAIツールを組み込み、すべてを適切に規制するのは困難です。現在の危機的な状況では、私たちには単にその能力が無いのです。」

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁