産業用ロボットで世界シェアトップのロボット大国・日本で、最先端の研究を続ける早稲田大学の尾形哲也教授が、MIT Technology Reviewで話している内容が面白い。
https://www.technologyreview.jp/s/218697/ai-and-robotics/?fbclid=IwAR1hcE9KxSdyr33DfB192HV8xzd-_q0_ZC5c8dTqqGSU8plZJiSNqYyWs9E
・深層学習に代表される人工知能(AI)技術の発展に伴い、新たな応用先として注目が高まっているのが、ロボットだ。ロボットという身体を手に入れることで、AIはバーチャル空間を飛び出し、いよいよ実世界へと活躍の場を広げようとしている。
・尾形教授が専門としているのは「認知発達ロボティクス」という研究分野。ロボットに深層学習などの神経回路モデルを導入して学習、発達過程を観察する——いわば、ロボット開発を通じて人間が持つ『知能』の本質に迫るというものだ。
・現在、知能ロボット応用については大きく2つの流れがあると語る。1つはモデルベースと呼ばれる方法である。最も一般的な方法で、たとえば、移動ロボットであれば、カメラを用いた自己位置推定・マッピング技術を使い、環境のモデルを利用して移動する。もう1つは、ロドニー・ブルックス(元MITコンピューター科学・AI研究所所長、アイロボット共同創業者)らが作ったサブサンプション・アーキテクチャーの流れだ。1990年代以降で成功例として語られるのが、アイロボットの自動掃除機「ルンバ」である。
・「サブサンプションは昆虫の知能をモチーフとしていて、簡単な『反射』をするモジュールをたくさん組み合わせて階層化することで結果的に目的とする行動を達成しています。このビヘイビア(振る舞い)ベースでのロボットの成功例がルンバで、カメラなどの情報は利用せず、実際の身体を使って部屋のあちこちにぶつかって方向を変えていくことの積み重ねで、結果的に『掃除をする』ロボットとして成立します。いったんうまく動くようになれば環境のノイズにも強い手法ですが、さらに進化させるならば人間が試行錯誤を繰り返す必要があります。つまり、この設計方法も学習ロボットとは呼びにくい面があります」
・「今はまだロボットへの深層学習の導入は、この物体を見る(認識する)というところに使われるのが大半です。しかし、僕の興味はその先にあって、身体のコントロールまでを含めた学習に用いることを考えています。この場合に学習するのは人間がラベリングした『データ』ではなく、ビヘイビアベースドロボットのような身体を持ったシステムが自身の行動とその結果から創られるもの、これを『エクスペリエンス(経験)』と呼んでいます」
・ロボットの前にあるタオルがどのように変化するかを、ロボット自身に「予測映像」を生成させて学習させているのだという。さらにこのスキルを複数組み合わせることで「ドアを開けて通り抜ける」という高度な動作も比較的短期間に開発できるようになる。たとえば、日立製作所との共同で開発したドアを開けるロボットのデモでは、ロボットの動作を「ドアに接近する」「ノブを押す(引き/回し)」「ドアを開ける」「通過する」といったモーションに分解し、それぞれを深層学習によって学習させることで、さまざまな環境変化にも柔軟に対応した動作が可能になっている。
・人と触れ合ってコミュニケーションするロボットは人型が適しているという考えには一定の合理性があるという。その理由の1つは前述したように人間のスキルを転移(クローニング)する際に操作しやすいこと、もう1つは人間と同じような環境との関わり合いの中で自ら学習し発達するロボットは、ある程度人間の構造に近い必要があるだろうということだ。
・「人間はいつも少しだけ間違い続け、それを修正しながら生きています。ロボットにその『人間らしさ』を持たせることができるかということのほうがはるかに重要で、100%の最適解を出すモデルを目指すよりも、少し曖昧さや無駄を残した冗長性のあるモデルが世界の変化に対応していくのが本来の知能のあり方なのではないかと思います」
IT起業研究所ITInvC代表 小松仁
