「米国航空宇宙局(NASA)ハーベスト」プログラムの一環として、農業監視や食品セキュリティにおけるリモートセンシングへの機械学習手法の応用を研究している、米メリーランド大学(カレッジ・パーク)のハンナ・カーナー博士が、MIT Technology Reviewに、「特別寄稿:応用軽視のAI研究界、現実の問題に向き合うべきだ Too many AI researchers think real-world problems are not relevant」を載せているが興味深い。

 

https://www.technologyreview.com/2020/08/18/1007196/ai-research-machine-learning-applications-problems-opinion/

https://www.technologyreview.jp/s/216606/too-many-ai-researchers-think-real-world-problems-are-not-relevant/?utm_source=MIT%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%8E%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC+-+%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%BC&utm_campaign=3e43763750-NewsLetter_TheWeekend&utm_medium=email&utm_term=0_6f0fb6e76b-3e43763750-194425309&mc_cid=3e43763750&mc_eid=944002f1f3

 

 

・機械学習の研究者のコミュニティの関心は新たな手法の開発に集中しており、応用を軽視するきらいがある。しかし、影響の大きな現実世界の問題を、機械学習を用いて解決することの意義は大きく、応用研究についての考えは改められるべきだという。

 

・新たな手法の開発に研究が極度に集中することは、ベンチマーク・データセットの些末な、あるいは漸進的な改良を報告する論文の濫造を招き、研究者が順位表の上位を争うという問題のある研究方法へと繋がってしまうという。

 

・応用研究が最小限に留められている1つの理由は、機械学習分野の他の人々が、こうした研究は既に存在する手法の応用に過ぎないと考えていることかもしれない。しかし実際には、機械学習ツールを具体的な現実世界の問題に適用するには、アルゴリズムにしても技術的な作業にしてもかなりの労力を要する。このことに気づいておらず、ツールが「すぐに入手可能」で機能すると考えている機械学習研究者は、しばしば役に立たないモデルを作ってしまう。現実世界への影響には繋がらない測定基準を使ってモデルのパフォーマンスを評価しているか、そもそもターゲットを間違って選択しているかのどちらかであるという。

 

・応用研究が機械学習の主流として重要視されるべきもう1つの理由は、この分野のベンチマーク・データセットがひどく現実とずれていることだという。

新しい機械学習モデルは大がかりに収集されたデータセットで測定されるが、これらのデータにはノイズが無く、明確に定義され、はっきりと分類されたカテゴリー(猫、犬、鳥)を有している。深層学習はこれらの問題には上手く対処できる。なぜなら、想定しているのがおおむね安定した世界であるからだという。

 

・神経科学者でありAI思想の指導者であるニューヨーク大学のゲイリー・マーカス教授は次のように記している 。

「AIができる社会への最大の貢献は、(中略)最終的には科学的発見の自動化のような領域になることであり、そうなるべきなのです。特に、現在可能なレベルよりもさらに洗練された医学へと繋がることです。ですが、それを実現するには、まずこの分野全体が小さな範囲に留まらないようにする必要があります」

 

・世界が機械学習から恩恵を得られるようにするためには、ワグスタフ博士(NASA のコンピューター・サイエンティスト)が述べたように、機械学習コミュニティは今一度自分たちに、「この分野に求められている役割は何だろうか?」と問いかける必要がある。もし答えが世界に良い影響をもたらすことなのであれば、我々は応用についての考えを改めなくてはならないというのは、的を射ていると思う。

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁