MIT Technology Review記事「量子コンピューターは地下室に作れ 放射線の影響を新研究が解明」が興味深い。

(Neel V. Patel 米国版 上級記者)

 

https://www.technologyreview.jp/s/217493/cosmic-rays-could-pose-a-problem-for-future-quantum-computers/?fbclid=IwAR0UzwQlCUC6Ry0TSouxpUt4q-sMQIy1eu0DwZwgZ146d6qkdLPXYDRkSp4

 

・キュービットはほんのわずかな外乱にも大変敏感で、デコヒーレンスと呼ばれるプロセスを経て急速に減衰し、消滅してしまう。8月26日にネイチャー(Nature)誌に発表された最新の知見によると、宇宙放射線はデコヒーレンスの要因の1つであり、しかも特に厄介な問題となる可能性があるという。

 

・超伝導材料を使用し、電子のペアによりキュービットを生成するタイプの量子コンピューティングに基づいたものである。研究結果によると、コンクリート構造物といった私たちの周辺に普通にある物質が発生する自然放射線だけでも、このタイプのキュービット状態の有効寿命をわずか数ミリ秒にまで縮めるのに十分な影響力があり、量子コンピューター実用化のペースが鈍ることになるという。宇宙線によって生成される放射線であれば、さらに大きな影響を及ぼすことになる。

 

・マサチューセッツ工科大学(MIT)の量子コンピューティング研究者であるアンティ・ヴェプサライネン博士が率いる研究チームは、放射線を照射した銅に超伝導キュービットを曝し、自然レベルの放射線のみに曝されたキュービットが安定しているのは約4ミリ秒だったことを突き止めたという。この数字は実は量子コンピューティングの実験で平均的に見られる数字(約0.1ミリ秒の安定性)よりも長いが、たとえ数ミリ秒であったとしても、量子コンピューティングの実用化にはまだ短すぎる。この研究が強調するのは、物理的な振動や温度変化といったデコヒーレンスの他の要因を排除できたとしても、放射線という厄介な要因がある限り、量子コンピューティングの実現は困難だということだ。

 

・地表のほとんどの場所で低レベルの宇宙線が蔓延していることから、放射線干渉の緩和方法としては、最も簡単な方法が最も良いかもしれない。つまり、キュービット・デバイスを、鉛などの材料を使って放射線から遮蔽するか、地下に作るかだという。

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁