MIT Technology Review記事「How to fight a war in space (and get away with it) 『宇宙戦争』の始め方——人工衛星軌道上の危ない現実」(Niall Firth News Editor at MIT Technology Review)が興味深い。

https://www.technologyreview.com/s/613749/satellite-space-wars/

https://www.technologyreview.jp/s/159125/how-to-fight-a-war-in-space-and-get-away-with-it/

 

 

 

・人工衛星を撃破するアイデアは、人工衛星が誕生した頃から存在するらしい。米国が初めてASATテスト(失敗に終わった)をしたのは1958年で、 旧ソ連による世界初の無人人工衛星「スプートニク」の打ち上げから1年も経たない頃だったという。

 

・ただし、こうした示威行為とは裏腹に、まだどこの国も他国の人工衛星を破壊したことはないようだ。その主な理由は、そうした攻撃ができる国はたいてい核兵器を保有しているからだ。しかし、人工衛星があらゆる側面の市民生活や軍事行動との結びつきを一層強め、誰か、またはどこかの国が人工衛星への攻撃は危険を冒す価値があると判断すれば、攻撃の可能性は高まり、世界初の本格的な宇宙戦争が勃発しかねないという。

 

・現在、多くの公共インフラがGPSと人工衛星通信に頼っているため、それらが攻撃されれば大混乱を引き起こしかねない。軍も人工衛星に大きく依存している。

 

・中国のアナリストの評価によると、宇宙の90%以上は米軍の諜報機関に使用されているという。

 

・宇宙戦争は、必ずしも人工衛星を爆破することを意味しない。攻撃性の低い方法として、人工衛星と地上局のデータの流れを妨害するサイバー攻撃などが一般的に含まれる。こうした攻撃を実行しているハッカーもすでにいると考えられるという。

 

201611月、航空宇宙会社であるAGIの商業宇宙飛行センター(Commercial Spaceflight Center)は、おかしなことが起こっていると気づいた。高性能の太陽電池と新しい推進剤をテストするために設計されたとみられる中国の人工衛星が、打ち上げられてからしばらく後に、同国の他の複数の通信衛星に接近し始め、近くにとどまってから遠ざかって行ったのだ。数キロメートル内の距離は、宇宙においては危険な近さだ。同衛星は2017年と2018年には、別の衛星に接近した。昨年12月に打ち上げられた別の中国の衛星は、独立した制御下にあると見られる静止軌道に到達すると、2番目の物体を放出した。

 

・このとき中国は「共通軌道攻撃」に関する演習をしていたと考えられている。共通軌道攻撃は、物体を標的の人工衛星近くの軌道に送り、所定の位置に移動して命令を待つシステムだ。このような演習は攻撃よりも、他の人工衛星の調査や修理、廃棄などが主な目的と思われる。しかし、共通軌道は敵の人工衛星のデータをジャミングしたり、詮索したりするのにも使えるほか、物理的な攻撃をすることすら可能だという。

 

・ロシアも静止軌道上で演習をしているらしい。ロシアの人工衛星の1つ「オリンプ(Olymp-K」は定期的にあちこちに移動し始め、一時はインテルサットの2基の商用人工衛星の間に割って入った。別のときには、フランスとイタリアの共同の軍事衛星に接近し、フランス政府は「スパイ行為」と主張した。同じように米国は、宇宙空間を動き回る複数の小型人工衛星をテストしているようだ。

 

・米軍は、発見や攻撃がされにくい人工衛星の製作を始めているらしい。たとえば2022年に打ち上げが予定されている新しいGPS実験用人工衛星「NTS-3」はプログラム可能な可動アンテナが付いており、高出力で通信することでジャミングに備える。地上の管制官との接続が切れても正確性を保ち、信号の妨害を検知するように設計されているという。

 

・他の解決策は、1つの人工衛星の回復力を上げるだけでなく、1つひとつはそれほど重要ではない人工衛星を集めたコンステレーション(衛星群)を使うことだという。これは、軍事通信衛星の安価なネットワークを地球低軌道上に作ることを目的とする米国国防高等研究計画局(DARPA)の新しいプログラム、「ブラックジャック(Blackjack)」の背景にある考え方だという。

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁