MIT Technology Review記事「Meet the artificial embryos being called “uncanny” and “spectacular”  不気味なほどヒトに似た『人工胚』との出会い——法整備巡る混乱も」(Antonio Regalado 米国版 医学生物学担当上級編集者)の内容が興味深い。

https://www.technologyreview.com/s/614292/meet-the-artificial-embryos-being-called-uncanny-and-spectacular/

https://www.technologyreview.jp/s/162882/meet-the-artificial-embryos-being-called-uncanny-and-spectacular/?fbclid=IwAR3UPxAYNJTQ9ro97yP4qWAA6Xpl5VzecKpUjIFeX6Z8Fi0UsHkCsToZzGI

 

 

 

・幹細胞から作られる人工的なヒト胚から人間が誕生するのは、そう遠くない未来の話かもしれない。研究者らは、人工胚から人間を作り出すことを禁じるための法整備が必要だと訴えているという。

 

2019911日、ミシガン大学の研究チームは、ヒト胚にかなり近い人工胚モデルを幹細胞から効率的に作り出せるようになったと同日付のネイチャー誌で報告したという。研究チームは、この進歩によって不妊治療薬の試験や妊娠初期に関する研究ができるようになったと考えているが、一方で新たな法的、倫理的問題も投げかけているようだ。

 

・この人工胚は、幹細胞を誘導して、初期の羊膜嚢や胚の内部細胞塊(人の手足や頭など体の各部に分化する細胞群)を含む小さな球状の構造を自発的に形成させることで作られたという。ただし、この人工胚には、胎盤を作るために必要な組織が欠けているらしい。

 

・「不気味なほどヒト胚に似ています」、「この研究は特に驚異的です」と、今回の人工胚の研究結果に詳しいケンブリッジ大学の遺伝学者、アルフォンソ・マルティネス・アリアス教授は話しているようだ。

 

・科学者たちはいまのところ、これらは本物の胚ではなく、人間になる能力を欠いていると言う。だが、同様の研究が欧州や中国で進められるにつれ、あとどれぐらいで生存可能なヒト胚が研究室で合成できるようになるのかという疑問が浮上してくるというのは尤もだと思う。

 

・科学者たちは、そう遠くない未来に、自然に作られたものとほとんど変わらない胚を合成できるようになるだろうと信じているらしい。すでに、マウスの人工胚研究では、代理母となるメスのマウスに人工胚を移植して、生きた動物を作ろうとするところまで進んでいる。ただし、まだ成功には至っていない。

 

・懸念されるのは、もし科学者が研究室でヒト胚を作れるようになったら、誰かがそのシステムを利用して遺伝子改変した人間を作るのではないかという点である。つまり、小説『すばらしい新世界(Brave New World)』で描かれている中央孵化センターさながらのディストピアへ繋がらないかを心配しているのだという。

 

・体がどのように形成されるかを研究する発生生物学者にとって、ヒト胚をモデル化するシステムは強烈な知的興奮を引き起こすらしい。生物工学者のチエンピン・フー准教授(ミシガン大学のチーム)によれば、日本と英国のチームはすでに、ミシガン大学のマイクロ流体デバイスを用いて、胚の特定の細胞が将来の精子や卵細胞になる仕組みを研究しているそうだ。この仕組みを解明できれば、生殖細胞が欠損している人のために生殖細胞を作製する方法につながる可能性があるという。

 

・「何が胚であり、何がそうでないか」を決定しようとする際の政府の立場の変化は「現在の混乱状態」を象徴しているが、これによってロックフェラー大学のシジア教授らの研究が影響を受けることはないという。「現在の政策によって研究が遅れることはありません。民間の資金を利用すればいいだけですから」というのは、ちょっと不気味である。

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁