イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の「サピエンス全史」と「ホモ・デウス」を読んだが、実に興味深い。
朝日新聞の「ハラリ氏描く近未来 新階級『無用者』と見えない支配者」というインタビュー記事も面白い。
https://digital.asahi.com/articles/ASM921T2TM92ULFA001.html?_requesturl=articles%2FASM921T2TM92ULFA001.html&rm=293
・人工知能(AI)とバイオテクノロジーの力でアップグレードされたごく一握りの超人エリート層が、大半の人類を「ユースレスクラス(無用者階級)」として支配するかもしれない、という未来を描いてみせたハラリ氏はインタビューでも、「真の支配者(ルーラー)はアルゴリズムになる。残された時間は多くはない」と、急速にアルゴリズム(計算方法)の改良が進むコンピューターが人類を支配する将来が来かねないと警告している。
・また、「中央集権的なシステムはこれまで、データを集めても迅速に処理できなかったため非効率だった。だから米国がソ連を打ち負かした」が、「AIとバイオテクノロジー、生体認証などの融合により、歴史上初めて、独裁政府が市民すべてを常時追跡できるようになる」として、テクノロジーと独裁が融合する危険性に警鐘を鳴らしている。
・一方、複雑化する金融などアルゴリズムが支配するシステムはやがて誰も理解できなくなり、専門家ですら、膨大な情報を集めるコンピューターのアルゴリズムからのアドバイスに頼らざるを得なくなると指摘。「公式には権力は大統領にあっても、自分では理解できないことについて決定を下すようになる。『引き返せない地点』はすぐそこまで迫っている」。全体主義を防ぐため、データの保有権について政府が規制する必要があり、市民は政府に圧力をかけるべきだと主張している。
・今後10~20年の間に人類が直面する大きな課題を三つ挙げている。
① 核戦争を含む大規模な戦争
② 地球温暖化
③ AIなどの「破壊的」な技術革新
・特に技術革新については「30年後の雇用市場がどうなっているか、どんなスキルが必要なのかもわからない」と話し、どんな仕事にも就くことができない階層が世界中に広がる可能性も示している。
・19世紀には多くの国が、産業革命で蒸気船や鉄道を手にした英国やフランスの植民地になった。それが今はAIで起こっている。20年待つと、多くが米国か中国の植民地になる。国のレベルで今すぐ行動を起こさなければ手遅れになるという。
・人類に恩恵をもたらすはずが逆に脅威になる技術。その一つにハラリ氏は「AI兵器」の存在を挙げる。
さらに、AIとともに「今後20~40年の間に経済、政治のしくみ、私たちの生活を完全に変えてしまう」と警告するのがバイオ技術である。
・情報を集約して持つことで、計画経済や専制的な政府は、民主主義よりも技術的な優位性を持つ可能性がある。民主主義と自由市場が常によりよく機能する法則があるなどとは考えるべきではない。
・北京市内にある中国共産党の機関紙「人民日報」本社ビルの10階にある「中央厨房(ちゅうぼう)(セントラルキッチン)」は、最先端のメディアの現場だという。湾曲した壁一面に広がるモニター画面の中央に、中国全土の地図が青く映し出される。その上に光る大小の黄色の丸。「それぞれの記事がどの地域でどれだけ読まれているかが表示されています」。案内役の女性が説明する。各部が取材結果を持ち込み、次の取材計画を練るという。
だが、「厨房」の本当の機能は別にある。世論の流れを読み、「動かす」のだ。画面には読者の性別、年齢層、地域などとともに、読者の書き込みから「記事を読んだ人の感情が肯定的か否定的か」も表示されている。
「分析してどうする?」。尋ねると、案内役は当たり前のように答えた。「世論が極端に傾いていないかを見ます。反応を見ながら新たな記事を書き、世論を誘導するのです」
・ビッグデータが生む価値は「第2の石油」といわれる。個人データを巨大な利益に変えるグーグルやアマゾンなどの巨大プラットフォーマー「GAFA(ガーファ)」。データで国家を統制する中国のデジタル国家主義。双方が台頭する世界を、私たちはどう進めばいいのか。
・「技術はいい方にも悪い方にも働く。いま国家や企業が市民を監視するために一方的に使っている技術を、市民が国家を監視するためのものとして開発すべきだ」とハラリ氏は提案しているが、尤もだと思う一方、難しいなと感じざるを得ない。
IT起業研究所ITInvC代表 小松仁
