フューチャー イノベーション フォーラム(代表:牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャー株式会社会長兼社長)のイノベーションワークショップ2018で、東京大学大学院 工学系研究科 松尾 豊特任准教授が、「AIをめぐる世界の現状と日本企業の戦い方」を講演した内容が参考になると思う。
ディープラーニングはコンピュータの進化によって実現し得た新しい技術だが、原理は簡単で、一言でいうと「深い関数を使った最小二乗法」である。最小二乗法とは予測値と実際の値との差が最小になるようにパラメータを求める方法で、経済学で使用する「重回帰分析」などの関数では多くても数十個の変数が、ディープラーニングでは、関数の構造を2層、3層、4層とより深く組み立てることで、数万~数億個にのぼる変数を処理していく。
原理はシンプルだが汎用性は非常に高いという点において、ディープラーニングは産業に変革を起こした電気やトランジスタ、インターネットに匹敵する汎用目的技術だといえる。たとえば1980年代後半に誕生したインターネットは「リンクで文書をつなぐ」という単純な仕組みだが、次々に新しいビジネスを生み出し、誕生から20年程で巨大産業へと発展した。同様に2006年に注目されはじめたディープラーニングも技術のコモディティ化が進んでおり、近い将来、一大産業になると確信している。すでにAmazonやGoogleなどはディープラーニングを積極的に活用しているが、まだディープラーニングを使ったビッグビジネスは出てきておらず、日本企業にも大きなチャンスがある。
ディープラーニングでは“自分好みの生活をしたい”という欲求を満たす最終消費に関わる産業が、プラットフォーマーになる可能性が高い、というのは興味深い。
AIの活用で効率化・自動化が進んでも、衣食住や教育、医療など人がお金を払いたいと思う産業は最後まで残り、消費行動もパーソナライズされていくからだとし、そういう意味で、とくに日本の食産業には大きな期待をしている、日本の食は非常にレベルが高く、積極的な投資で“食のプラットフォーム”を築いていけば、世界で十分に戦えるはずだ、というのは尤もだと思う。

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁