日経BP社シリコンバレー支局の中田敦さんが、「量子コンピューターのXデー 集まるカネとヒト、野心」で伝えている内容が興味深い。
米QCウェアはソフトウエア開発者が使い慣れた「Python」「Java」「C++」といった既存のプログラミング言語を使って量子コンピューター向けのソフトウエアを開発できるツールなどを、一般企業や政府機関に販売しているという。

量子コンピューターの研究者が「現在のコンピューターでは絶対に不可能な性能が発揮できる」と認める「万能量子コンピューター」が、すぐに実現するわけではないのは尤もだと思う。
万能量子コンピューターを実現するには「0」と「1」の両方が同時に存在する「量子ビット」のエラー訂正技術が不可欠であり、それには数百万個から数億個の量子ビットが必要とされ、万能量子コンピューターの実現は、まだまだ先のことだと考えられているようだ。
一方、グーグルや米IBMが数年以内に商用化する予定の量子コンピューターは、量子ビットの数が数十~数百個に限られ、量子ビットの数が少なくエラー訂正もできない「NISQ(ノイズがありスケールしない量子コンピューター)」と呼ばれるハードウエアという。
しかしグーグルやIBMは、NISQであっても特定の用途であれば、現在のコンピューターでは絶対に到達できない性能を実現できる可能性があるとの主張をし始めているらしい。
期待される用途の代表格が「量子化学シミュレーション」で、量子コンピューターを使って様々な化学反応を分子レベルでシミュレーションすることで、化合物の劣化を防いだり、より効率的に生成したりする方法を見つけ出すという。
分子の内部では量子力学の物理現象が発生しており、それを古典コンピューターでシミュレーションするのは困難だとされるようだ。
量子コンピューターを使って量子化学シミュレーションを実行するアルゴリズムは、カナダ・トロント大学のアラン・アスプル=グジック教授が考案したもので、17年に、量子コンピューター向けのアルゴリズムを開発するスタートアップの米ザパタコンピューティングを起業している。

また、独フォルクスワーゲン(VW)は18年6月、量子コンピューターを使って実用的な新材料の開発を進めていると発表しているが、量子コンピューターを使った量子化学シミュレーションによって、高性能電池材料の化学構造を最適化、それによってVWにとって「オーダーメイド」の高性能電池の開発が可能になるという。
量子コンピューターが数年以内に実用的な性能を発揮するか否かは、現時点では不明だが、期待の段階で、ヒトとカネが猛烈に動き始めているらしく、半導体の集積度が上がり続ける「ムーアの法則」の終焉が近付く中、誰もがムーアの法則に変わるコンピューター処理性能の向上要因を求めており、量子コンピューターはその有力候補の1つであり、今後も期待は高まり続けるだろうという指摘は的を射ていると思う。
IT起業研究所ITInvC代表 小松仁
