経済産業研究所RIETIのノンテクニカルサマリー「グローバル・ソーシングと国内生産ネットワーク Global Sourcing and Domestic Production Networks」[古沢 泰治 (一橋大学)/乾 友彦 (ファカルティフェロー)/伊藤 恵子 (専修大学)/Heiwai TANG (ジョンホプキンス大学)]の内容が興味深い。
中間製品調達先を決定する際のコミュニケーション・コストの発生も考慮に入れた国内の地域間および外国との企業の取引モデルを構築しており、このモデルからは、外国における供給ショックにより企業がオフショアリングを開始することにより、3つの理論的な帰結を予測している。
1)同一産業内における生産性の低い中間製品供給企業が代替される(直接代替効果)。
2)オフショアリングによる限界費用の減少により、同一産業内でより生産性が高く距離の離れた中間製品供給企業からの調達を開始する(同一産業内リストラ効果)。
3)近隣に立地してより差別化された中間製品製造企業と取引を開始する可能性がある(産業間構成効果)。
日本企業のオフショアリングが企業の生産ネットワーク全体に与える効果は、これら3つの効果のそれぞれの影響力の多寡によって異なるとしていたが、実証分析の結果、企業のオフショアリングにより、中間製品製造企業との取引が代替されることは少ないものの、代替される場合には規模の大きい企業が代替されること、また近隣に立地して、差別化された中間製品製造企業との取引を開始する傾向があることが判明し、この結果は、上記の3つの効果の合成効果として理解できる、というのは尤もだと思う。
IT起業研究所ITInvC代表 小松仁
電気機械産業に属する企業のオフショアリングの開始により新しく取引を開始した企業および立地
