キャノングローバル戦略研究所CIGSInternationalResearch Fellow櫛田 健児さんが、「AI浸透についての考え方のフレームワーク:日本にとってどこが高付加価値となるのか」を論じている内容が、非常に興味深く参考になると思う。

 
カリフォルニア大学バークレー(UC Berkeley)での会議に協賛、参加してきた内容を踏まえたもののようだ。 

 
AI浸透のパターンについては下記としている。
 
1)フロンティアAI(トップの先端企業のみの領域)では、日本はある程度貢献できるかもしれないが、基本的にフォロワーである。
 
世界で最も時価総額が高く、現金保有高もトップのアップルやグーグル、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブック(Facebook, Apple, Microsoft, Google, Amazon FAMGAという)は、こういったトップ人材の獲り合いをしており、トップ人材の給料は急騰している。
 
2)専門的なAIツールでは、スタートアップと日本企業が共に価値を創造する可能性は十分にあり、日本のスタートアップにもチャンスはあるはず。
 
専門性が高い領域では、日本のスタートアップも 大企業と組むという形で、 少数精鋭の技術開発者にチャンスがあるかもしれない。
 
例えば、プリファードネットワークスは、工場内のロボティクス作業を機械学習でレベルアップさせるシステムに取り組んでおり、ファナックやトヨタといった企業に導入して共同で開発しており、シリコンバレーにも開発拠点を置き、技術開発担当者としてトップレベルの日本人が活躍している。
 
3)コモディティーのAIツールでは、フロンティア企業が開発したものを、日本企業はITベンダーを通して導入するが、コストカットだけではなく付加価値アップにも使うべき。
 
日本は、言語の都合でデジタルデバイドが深く広いので、音声認識をあらゆるところに導入することで、欧米よりもITの導入が遅れた中小企業や高年齢者が運営するローカルビジネスにITシステムを一気に導入できる可能性がある。
 
4)さらに、コモディティーを提供するのはフロンティアの企業なので、それはインプットとして活用し、その上で付加価値を追求するべき。
 
19世紀の半ばにアメリカの鉄道が中西部から東海岸まで出来上がり、中西部の安い麦が大量に欧州に流れ込んだ際、デンマークはローエンドの農業はあっさり諦め、安い麦は牛に与えて乳製品に特化し、今では、デンマークの乳製品はヨーロッパではハイエンドのものとなっている例をあげている。
 
現在も、デンマークは社会システムとして労働者の再教育をし、デザインなどに対する教育を充実させ、ハイエンドを追求する国となっており、近隣諸国より裕福だが、威張らず自慢しない国柄といえるというのは、面白い。
 
IT起業研究所ITInvC代表 小松仁
 

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