Forbs Japanの記事“トヨタのAI研究トップが描く「ヒトと機械」の未来”の内容が興味深い。
トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のギル・プラットCEOは、自動運転を推す際に語られがちな「『(人間による)事故や死亡者が多い。だから(機械による)自動運転が必要だ』」といった意見に対しては、「論理的に飛躍している、自動運転は安全性を高めるための潜在的な答えの一つにすぎない」と与くみしないという。
むしろ、「人々がより楽しく、より安全に運転できるよう寄与する」ほうがトヨタとTRIの思想に近いようだ。
「無事故が続くと、人間はもう事故は起きないだろうと思い込む傾向にあります。
これは興味深いパラドックスです。
つまり、システムが優れていて信頼できるほど、人は過信してしまうのです。
こうした認知バイアスについても考える必要があります。」
というのは、面白い。
サービスとしての「移動(モビリティ)」と「自律性(オートノミー)」は相乗関係にあり、自動車が「移動」の可能性を広げたのと同じように、ロボットも人の「自律性」を高めることができるという。
機械ならば、人が高齢や病により失う心理的、肉体的、社会的な力を取り戻す手助けをしてくれるかもしれない、「AIならばロボティクスの領域でできることがたくさんある」というのも、よく理解できる。
機械が肉体労働にとって代わり、AIが知的労働を担うようになるならば、人間にはいったい何が残されるのか──。
プラットCEOは未来を憂いていない。
私たちは日常的にスポーツを嗜み、五輪のようなスポーツイベントにも夢中になる。
同じように、AIが知的労働を肩代わりし、私たちが頭を使うことを選択できるようになるかもしれない、好奇心に従って、クリエイティビティ(創造性)を追求する未来もありうるのだ、というのも的を射ていると思う。
IT起業研究所ITInvC代表 小松仁
