
世界各国とも民間企業レベルでは国際分業システムが確立し「製造機能は東欧、アジア、中南米におけばいい」との発想でものづくり機能をどんどん他国にシフトさせてきたが、ここ数年、国家レベルでは、各国とも、ものづくりは自前でやっておきたいという動きがでてきたというのは、再認識される。
「ものづくり」機能を自国にもっていないと付加価値のあるものが産まれない、新しい成長の源が産まれないということがみえてきた、自国の人材、製造技術、資金が流出したまま自分の国にはなかなか還元されず、その結果、新しい価値を創り出す力まで弱体化してきたというのは尤もだと思う。
日本は戦後復興・高度成長時代から石油ショックの頃までは、基本的にはキャッチアップ型イノベーションであり、米国モデルが先行して存在し、テーラー方式(科学的経営管理)を導入し、品質目標も所与でコスト最小化を達成させてきたわけで、労働費用が小さく、為替も円安で安定していたという、後続者優位の時代だったが、これまでの中国などの躍進も基本的にはキャッチアップ型によるものだと言えるというのは、的を得ていると思う。
次に、円高誘導のプラザ合意で厳しくなったが、労働費用の上昇、消費者嗜好の多様化、グローバル化という変化に対応し、FMS(多品種少量生産システム)の開発・導入と現場技術(カイゼン、JIT)で乗り越えてきたのは、インテグラル型で、適応型イノベーションの成功としているが、最近はその限界も指摘されているというのもよく理解できる。
参考になるのはドイツだとして、「Industry4.0」(18世紀の産業革命、20世紀初頭のフォード生産システムに代表される大量生産の出現、1970年代から始まった電気・電子技術による自動化に続いて、現在進行中のサイバーフィジカルシステムによる第四次産業革命を意味する)という国家プロジェクトを掲げて、IT技術などコンピュータソフト、情報ネットワーク技術の進化にあわせた次世代のものづくりの研究を始めている状況を改めて紹介している。
ドイツが面白いのは、産と学に境目がないことで、企業出身の研究者が大学教授として教えたり、大学の先生が企業連携の製品化技術を推進しているようだ。
また、かつて日独にキャッチアップされて、ITで凌いた米国が、ふたたび生産技術イノベーションに力点を置き始めたのは確かに注目される。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20141104/273351/?P=2&n_cid=nbpnbo_author&rt=nocnt