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RIETI「新しい貿易統計から見える日本の産業構造転換」にあるように、OECD(経済協力開発機構)は「付加価値ベース」の新しい貿易統計(Trade in Value Added:TiVA)」を先月公表したが、国・地域間の貿易構造を「付加価値」という視点から再整理した統計になっている。

従来統計では、日本の貿易構造の変化として、電気機械産業をとると、1998年時点では、日本から北米やヨーロッパに対しての最終財輸出がもっとも大きかったが、2008年時点で見ると、北米・ヨーロッパへの最終財輸出がおおむね一定であるのに対して、中国や韓国、台湾といった東アジア諸国への中間財輸出が大きく増加しており、これは日本から見ると、主たる貿易相手国が北米・欧州から東アジアに変わったことを意味する。

これに対し、「付加価値」という視点から貿易収支を見ると様相が変化し、たとえば、日本で生産された中間財が中国に輸出されて、中国で組み立てられた最終財がアメリカに輸出される場合、伝統的な指標では、日本の対中国貿易黒字が拡大し、中国の対アメリカ貿易黒字が拡大するが、中国からアメリカに輸出された最終財に含まれる付加価値の一部は、日本で生み出されたものであるため、付加価値ベースで考えると、日本から中国に輸出した中間財の最終的な需要国はアメリカになる。

大前研一さんの「ニュースの視点:新貿易統計と円相場~新たな視点を持って実態を把握する」にあるように、複数国に生産拠点が分散する国際分業の浸透を踏まえ、付加価値の流れを追うことで通商関係の全体像を把握できるものであり、この新たな貿易統計は非常に重要な指標だと思われる。

それにしても、日本を取り巻く環境は激変しているが、ベイカレント・コンサルティングの萩平和巳さんが「日本企業の進化論」の中で、事業環境の激変とこれに伴う日本企業の大幅なパフォーマンス低下の2大要因とされる「デジタル化」と「グローバル化」のうち、後者に関して、「巨大な世界単一市場の出現」、「資本の世界規模の流動化」、「企業や人の世界市民化」という3つの側面を挙げているのは参考になる。

戦後日本は、西側という世界で最も豊かでかつ労働力も第三世界のように無尽蔵にはない“Walled Garden(囲まれた庭)”で、その市場機会を安定的に享受しその礎を築いてきたが、東西冷戦終結により東側と西側、第三世界という境界が無くなりCOCOM規制なども解消され、「巨大な世界単一市場」が出現し、さらに、冷戦中は競合とはならなかったBRICS(第三世界)、さらに、それ以外の発展途上国と正面から競合するようになってしまっている。

さらに、資本が世界中を流動的に行き来するようになり、世界に数ある私製巨大ファンドに加えて、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)と呼ばれる政府出資ファンドはその巨大さを年々増し、その投資先も数や業界、地域を増す一方にあり、中国のCICや、シンガポールのテマセック、マレーシアのカザーナ・ナショナル、クウェートのKIAなど、SWFの投資総額は年々増加し、総額数百兆円規模(一説には1000兆円以上)と言われ、有望な投資先を発掘・投資して成長を支援するだけでなく、その技術やノウハウが有望であれば自国に導入・活用しようとしている。

また、世界で戦う巨大企業は、事業の最適地を求めて世界を転々とし、どの消費地をターゲットにして、どこにオペレーション拠点をおき、どこにリージョナルHQ(ヘッドクオーター、地域本社)を置くか、それらをどのようにグローバルにマネージしていくかを進めており、優秀な人材も生活価値が高い地を求めて移動していくことになる。

これらに対する日本企業の進化の方向性として、萩平さんは、ビジネスモデルでの以下4点の対処を挙げており、興味深い。

(1)企業・事業統合を含めた消耗戦の回避
日本での過当競争による消耗戦状況を回避し、韓国勢のように、国内市場は小さいが寡占状態のため母国市場で十分な利益を上げて固定費を回収し、その余力で欧米などの海外市場向けには製品を安価で提供し、シェアを上げていくというモデルが参考になる。
各業界の大手企業による企業・事業統合、もしくは撤退による過当競争の抑制を進めていく必要がある。

(2)世界市場向けに戦略商品をつくりだす
グローバル化により、一企業が巨大な世界単一市場において、商品(製品やサービス)を大量販売して儲けることが可能となり、成功して大きな利益をあげた企業は、次の商品にも大きな投資をし、更に良い商品をつくり世界市場に提供して、更なる収益向上を実現するという良循環を生んでいる。
アップル、サムスン、ファイザーなどグローバルプレイヤーの巨大ヒット商品(ブロックバスター)により、“Winner takes all(一人勝ち)”化が進行している。

(3)モジュール化
大量の部品(主にメカトロニクス)を組み合わせていき、最終的な製品のチューニングをし、品質や質感(乗り心地など)を担保していく「すり合わせ」という日本製造業の従来の生産スタイルでありお家芸ともいえる従来の強みに対し、フォルクスワーゲン(VW)のプラットフォーム戦略、モジュール戦略、さらにプラットフォームフリーの車両設計が可能となるモジュラー・マトリックス戦略などを取り込み、従来のように、謂わば日本の中で宮大工をしている訳にはいかなくなったので、世界中で日本より習熟度とコストの低い人を使って、事業を回すことが可能となる道を進める。

(4)グローカライズ
基本的には、商品(製品やサービスなど)にグローバルモデルがあり、それを各国に展開していく「グローバライズ」と、各地域固有のニーズを反映して、ローカルに商品展開する「ローカライズ」の2つを両立させる、P&Gやサムスンに見られるような「グローカライズ」モデルを進める。

具体的には、
.哀蹇璽丱襯優奪肇錙璽(ブランド、ノウハウ・知見)を活用し、品質を保ちつつコストも削減する
▲蹇璽ルニーズに合わせて研究開発・商品改善
(成功後)ニーズの近い周辺市場に展開
づ験先市場のローカルニーズに合わせて、さらに磨き上げ
といったステップを採ることになる。