先日、映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を観た。
 
小さな食料品雑貨商の娘だったサッチャーは、オックスフォード大学に進学、初めての下院議員選に落選し落ち込んでいた時に、プロポーズされ結婚した相手が夫君デニス・サッチャーで、彼の死亡後8年でようやく遺品整理を始めたが、認知症が始まっていたため、幻想の夫君と会話をしつつ昔を振り返る展開となっている。
 
実話として、2008年当時のインタビューで、娘のキャロル・サッチャーさんは、過去数年間で最もつらかったのは、2003年に父(デニス・サッチャー)が他界したときだった、母(元首相)が父の死亡という事実を忘れてしまうたびに、キャロルさんは、何度も最悪の知らせを伝えなければならなかったというエピソードを記しているが、映画からもそれが窺え、何とも痛ましい。
 
ところで、「鉄の女」のいわれは、英国ほか35ヶ国で調印・採択されたヘルシンキ宣言を痛烈に批判したのに対し、当時のソ連の軍事新聞「赤い星」の記事で「鉄の女」と呼び非難したのが始まりらしいが、この呼び名をサッチャー自身も気に入ったのは何とも皮肉で、またその後あらゆるメディアで取り上げられたために、サッチャーの代名詞として定着したというのも面白い逸話である。
 
政策的には、新自由主義に基づき、電話、ガス、空港、航空、水道等の国有企業の民営化や規制緩和、金融システム改革を強いリーダーシップで断行し、さらに改革の障害になっていた労働組合の影響力を削ぎ、所得税、法人税の大幅な税率の引き下げを実施、付加価値税(消費税)は従来の8%から15%に引き上げるなど、後になって、ブレア首相の時代に相当行き過ぎとされた面を是正されているが、所謂英国病を打ち破った功績は誰しも認めるところだと思う。
 
映画では、フォークランド紛争や国民に負担を強いた結果の反発など苦労の連続が映し出されるが、夫君との愛情、信頼関係など心温まる様子を、メリル・ストリープが今回アカデミー主演女優賞の2度目の受賞となった演技で、見事に演じきっていた。
 
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