福島第一原発をめぐる東電の経営管理のだらしなさ、政府の迷走など、相変わらずの状況に皆辟易しているのではないだろうか。
 
一方、震災後2ヶ月半も経ち、各種の提言も数多く出てきている。
 
例えば、NRI野村総研の「震災復興に向けた緊急対策の推進について(第11回提言)」では、産業復興の考え方 先導的新産業拠点の形成をめざしてと題し、この地域の産業復興では、新たな雇用の創出も視野に入れて、従来からの産業の再生とともに、新産業の創出を目指すことも必要であり、東北地域が有する様々な地域資源や、これまでの産業創出に向けた取り組みを活用し、
①シーフード産業、
②超ものづくり産業、
③環境関連産業、
④新資源産業、
⑤健康医療産業、
5つの産業クラスターを重点的に構築することが望まれるとしているのは適切と思う。
 
これらの産業復興を推進していく上での留意点として、被災企業の早急な復旧を図ることは、従業員の生活維持のためにも、産業活動におけるサプライチェーン障害の解決のためにも極めて重要であり、被災企業は、これまでの設備投資に伴う借入に加えて、復旧・復興に伴う設備投資により二重債務に陥る可能性が高いため、これを防止する方策として、国内他地域の企業が有する中古産業機械を被災企業に譲渡する「中古産業機械のマッチング事業」を提案しているのは面白い。
 
また、復興の取り組みを円滑に進めるためには、財政・金融面の支援だけでなく、政府が検討中の「復興特区」などの制度を活用し、税制優遇や規制緩和など、復興のための環境を早期に実現すること、日本の今後の産業活動の高度化を先導する先端的な産業システムの構築のために、国内外との繋がりを強化するための空港・港湾機能や、産学協同の共同研究施設など、産業活動のステップアップに対応した新しい産業インフラ整備も重要としているのは、的を得ているように思う。
 
また、経済評論家で作家の三橋貴明さんが、関東大震災発生の翌日に山本権兵衛内閣の内務大臣に就任した後藤新平の例を引き、その日の深夜には「帝都復興」のための復興根本策を起案し、帝都復興のために当初、一般会計予算(約15億円)の2.7倍に相当する規模の予算を用意しようとし、最終的に国家予算の3分の1強を承認させたなどの豪腕ぶり、リーダーシップを紹介している。
 
特に、当時、増税策をとらず国債を発行した策について、今回も、増税とは国民の支出即ち需要の意欲を削ぐ政策であり震災によりただでさえ萎縮している国民の支出意欲を削り取り、GDPが低成長もしくはマイナス成長に落ち込むと、当然ながら政府の税収は減り、結果として、被災地の復興の財源が先細りになってしまうとして、大震災後に増税を実施したようなおかしな政府は、人類の歴史に存在していない、と論じているのは面白く納得できる。
 
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶというのも皮肉といえない面がある。
 
また、法政大学大学院政策創造研究科教授の小峰隆夫さんが、電力問題についての三つの誤解を論じているのも面白い。
 
①第1の誤解「電力業は普通の産業ではない」
一つの事業者が地域的に独占して電力を供給したほうが従来は効率的だっただけで、太陽光発電や風力発電など発電部門は規制を緩めて自由に競争させ、送電部門だけ地域独占としたほうが良い。
 
②第2の誤解「電力料金を引き上げるのは望ましくない」
「これまでの料金が当然だ」と考えるから、値段を上げると「不当に高いからけしからん」と思ってしまうが、本来多額の補償金に備えた保険料を用意しておくべきだったとすれば、「これまでの料金が安すぎた」と考え、料金を引き上げるのが当然だということになる。
さらに、節電を促す手段としては、価格を上げることがもっとも効率的で公平である。
 
③第3の誤解「現時点でも節電をすべきである」
今や震災直後のショックから立ち直り、復興を考える時になっており、いたずらに消費を手控えるのはやめた方が良く、これは経済学で言う「合成の誤謬(ごびゅう)」という状態に似ている。
 
以上のほかにも、色々と識者が提言し、論じているが、問題は後藤新平のような豪腕を発揮して実行できる人物、環境があるかという点で、G8の菅首相の発言も一寸虚しく聞こえる。
 
イメージ 1