ようやく民主党の代表選が終わり、改めて日本の針路が問われる段階にきた。
経済、外交など難問山積であるが、これらを解きほぐしていくといくつかの共通で重要な要素があり、中でも日米同盟も大きくからむ中国との関係がある。
今年GDPで日本を抜き世界第2位となるわけだが、日経新聞論説委員の飯野克彦さんが述べておられるように、中国も世界2位と浮かれる余裕がない状態で、これまでのように「量」の拡大を柱とする経済発展ではない、新しい発展のあり方を探らざるを得ず、胡錦濤国家主席が、広東省深セン経済特区の成立30周年を記念する式典で、深センの発展ぶりを「世界史上の奇跡」とたたえながらも、 (1)経済発展モデルの転換(2)改革・開放の深化(3)社会主義イデオロギーの求心力強化(4)調和のとれた社会の促進(5)共産党政権の強化という5つの課題は、今後の中国全体の戦略的な課題でもあるように見える。
投資と輸出に頼った成長から、消費や技術革新なども原動力となるバランスのとれた成長へ、量的な成長を重視する発展から、民生の向上や生態環境の保護・改善にもつながる質の高い発展へというのがポイントになるのだろう。
中国経済が巨大化するのにともなって、発展を制約する要因として資源・環境面の限界がますますはっきりしてきており、人口動態からすれば、今後10年ほどで生産年齢人口が減り始めるのは必至で、経済成長を保ち国民の生活水準を高めていくには技術革新による生産性の向上が欠かせない。
中国政府は、(1)省エネ・環境、(2)新世代情報技術、(3)バイオ、(4)ハイエンド装置産業、(5)新エネルギー、(6)新素材、(7)新エネルギー車 を戦略的新興産業として選んでおり、財政・金融面からのてこ入れを明記すると同時に「国際協力を深める」ことを強調し、知的財産の保護・管理の強化を重視する姿勢を打ち出してもいる。
天津で開かれた夏季ダボス会議の冒頭、温家宝首相も、中国に進出した外資は中国企業だと強調し、「核心的な技術を自力で生み出す能力」を高めるため、海外からの技術導入をむしろ加速させる方針が見えてくる。
今のままでは、中国の世紀は短命だろう、長くても数年、世界史上最も速く過ぎ去る“世紀”になりそうであり、2011年末までに中国の経済成長率は2ケタを割り込み、国内総生産(GDP)は10年にわたる減速が始まるといった予測記事を米フォーブス誌(ゴードン・G・チャン氏。『やがて中国の崩壊がはじまる』の著者)も掲載している。
不動産バブルの崩壊、全般的な水不足を基本原因とする環境災害から発生する環境難民(2020年までに3000万人の可能性という世界銀行の予測)、さらに、中国の人口は2020年までにピークに達しその後人口が減少していく少子高齢化など大きな難問を抱えながら、中国政府の舵取りは行われている。
中国と接していく上で、相手もこのような弱みを持ち、さらにウェブ環境の発展から、インターネット世論というポピュリズムの影響を受け、日本に対しても建前と本音が異なる状況が窺え、日米同盟の観点から米国も気にしている尖閣諸島の問題なども、今度の新政権では賢く対応してもらいたいものと思う。
