「ブラック企業、世にはばかる」の著者でキャリアコンサルタントの蟹沢孝夫さんによれば、「ブラック企業は大きく2つに分けられ、1つは、悪徳商法やヤミ金融など、法に抵触したり世間や個人に迷惑をかけ損害を与える違法な活動をしている企業を指し、存在自体が反社会的な会社であるが、もう1つは、対外的には問題はなく真っ当な会社だが、内部的な問題を抱えてブラック視されている企業」という。
問題として根深いのは、むしろ後者のほうで、超過勤務や低賃金、過度なノルマといった低待遇で社員を苦しめているにかかわらず、社会の歯車の一部として不可欠な存在になっていることもあり、簡単に撲滅できないという矛盾をはらんでいる。
ブラック企業には、労働や社会保険の分野で守られるべきルールが守られず、劣悪な環境(仕事量、勤務時間、安全衛生面、職場の雰囲気など)のなかで働かせ、適正な賃金が支払われない、言わば古典的な、肉食系ブラック企業がまずある。
また、世間的には勤務条件・職場環境等に恵まれ、優秀な大学を出たエリートホワイトカラーの就職先として認知されているが、一皮むくと実情はブラックという職場で、外資系企業や金融機関に多く、報酬は高いものの、時給換算すればコンビニのアルバイト以下という待遇もめずらしくないというグレーカラー企業がある。
さらに、待遇は決していいといえないが、やること自体はラクである一方、こうした仕事を続けていくうちに、人生において大切な時間や将来性を少しずつ奪われてしまい、キャリアアップにつながらない業務を強いられるなど、下請け会社勤務のビジネスマンによくあるケースの草食系ブラック企業がある。
草食系ブラック職場は、年齢を重ねてもその分のスキルアップがかなわない場所であり、体調を崩すほどの激務ではなく、仕事内容に対して最低限の給料しか出ないものの、とりあえずは暮らしていけ、その仕事内容にだんだんと不満が溜まっていくが、スキルレベルが低いため、同じレベルの企業にしか転職できず、年齢を重ねるほど悲惨だということになる。
デジタル/アナログのシナジー効果の高いコンテンツ企画事業を経営している藤木俊明さんは、自身のブログで、この草食系ブラック職場にいる人間は、おそらくそこをやめたところで、また同じような草食系ブラック職場につとめる羽目になることが見えているとし、会社に勤めながら、静かに独立の準備をすすめていくことをすすめたいという論を述べている。
「会社を辞めずにローリスクで独立・起業する」という著書もあり、いきなり独立するというのは無茶だが、その職場にいても蛇の生殺しのように時間が過ぎてしまうわけで、それなら、生活給を確保したまま、人脈を広げ、現金を得る習慣をつけはじめて、少しずつ独立に向けて舵を切っていく、そんなスタイルをすすめている。
しかし、考えてみると、最終的にも独立できるようなセンスと気力のある人材が、そもそも草食系企業を選んで職についているだろうかという素朴な疑問も感じる。
むしろ、グレーカラー職場にいる人間のほうが最も近道にいるような気もする。
しかしながら、草食系ブラック職場には、よく言われる、ゆっくりゆでられると蛙は環境が変わっていってるのに気づかないうちにゆであがってしまうという「ゆで蛙」現象に似たところもあり、職場が存続していく限りは、ある意味でHappyであり問題ないとも言えるが、例えお役所やその外郭団体でも、昨今の事業仕分けのようにぬるま湯のようではいられなくなりつつあり、藤木俊明さんの言うように、ローリスクを活用しながら将来に備えた手を打っていく必要がやはりあるようだ。
