イメージ 1

司馬遼太郎の作品を読み返すと、坂本竜馬という人物が好きだったのだなと思う。

「昭和という国家」の中にも、「幕末ということでひとつ考えてみたいのですが、坂本竜馬という人はいい人ですね、日本の歴史の中でも、坂本竜馬のことを考えると、本当にそこだけ陽があたっているような思いがします。」と書いている。

坂本竜馬は、土佐藩の河田小竜という、画家で非常に能力が高く藩の重要な仕事にも携わり、ジョン万次郎が漂着して米国から戻ってきた時にも尋問役となった人物に会い、「何か面白い話はありませんか」と聞いている。

「日本は国が小さくて資源もなくて、この国が国際社会でやっていくのは大変なんだ、結局、海運業、貿易を盛んにする必要があるんだ」と聞き、これが竜馬の生涯の主題になっている。

後に、勝海舟に師事し、神戸の海軍塾で航海術の実務を身につけ、この志を貫こうとしている。

彼自身は、明治維新成立の直前に暗殺されるわけだが、司馬遼太郎は、この時点で新国家の青写真を持っていたのは、西郷隆盛、木戸孝允などではなく、竜馬だけだったろうとしている。

その青写真が言葉になって残っているのが、「船中八策」で、大阪への船中で、土佐の参政(一種の臨時家老)の後藤象二郎に、新しい国家はこの方針で行こうと提示し、説明教育している。

1、天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令宜しく朝廷より出づべき事。
1、上下議政局を設け、議員を置きて万機を参賛せしめ、万機宜しく公議に決すべき事。
1、有材の公卿・諸侯及び天下の人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、宜しく従来有名無実の官を除くべき事。
1、外国の交際広く公議を採り、新たに至当の規約を立つべき事。
1、古来の律令を折衷し、新に無窮の大典を撰定すべき事。
1、海軍宜しく拡張すべき事。
1、御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事。
1、金銀物貨宜しく外国と平均の法を設くべき事。
 
竜馬の生涯のテーマは海運であり、それをやりたいのに、統一国家にならないと海運も貿易もままならぬわけで、早く統一国家になってほしいのに、薩長他がもたもたしているので薩長秘密同盟を結ばせ、また、京都がもたもたしているので、大政奉還を提案している。

今、我々が読んでもこの「船中八策」は素晴らしい内容であるが、薩摩との交渉の中で、「上下両院を作る」という重要な要素を削られてしまったのは残念であり、竜馬の死亡により、国家の青写真を描ける人材の欠如により、手本とすべき外国を捜し求めた結果、ドイツを選んだのはその後の日本を決定づけたことになる。

こうして考えてみると、重要な時期に、枢要な人物が登場するものであり、また、これを大事にしないといけないということになるのではないだろうか。