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よく言われる「ガラパゴス化」とは、隔絶された特殊な生態系の中で独自の進化を果たしたガラパゴス諸島の生物に例え、日本語の壁、高機能志向のユーザニーズ、独特の業界慣行などで、日本市場が独自の世界を構成し、この中で独自の進化を遂げ、国内では通用し強みを持っても、世界市場には適応できないものになることを指している。

典型的な例は、携帯電話で、日本市場では、世界トップクラスのノキアが撤退せざるを得ない中、世界では、ノキア、サムスンの2強のほか、ソニー・エリクソン、モトローラ、LGエレクトロニクス等が支配し、日本の携帯端末メーカーを全部合わせても、一桁のシェアという状況にある。

第1に、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイル等携帯キャリアが決める製品仕様をベースに開発するスタイルが確立され、携帯キャリアが携帯端末を購入、通信と一体化して販売する垂直統合モデルでやってきている。

これには、携帯端末メーカーとしては、コンテンツ接続を実装するための独自仕様を追求する開発リスクを回避できるという旨みもあった。

第2に、携帯キャリアが、販売代理店に多額の販売奨励金を出し、携帯電話自体はただという事態になった。

市場の立ち上がりは急であったが、一方、製品寿命が短いという痛みも伴っている。

第3に、独自の液晶高精度化、薄型化、ワンセグ対応など先行した高機能化競争とともに、ユーザサイドも、ただで機能の高い方が良いというニーズがスパイラル的に働き、独自の参入障壁となる一方、世界市場で成長率の大きいBRICs他発展途上国向けとしては、機能・価格が高すぎて競合力がないという状況にある。

このような、「ガラパゴス化」現象がなぜ起きるのか、その対策はあるのかといった点につき、三木雄信ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト(株)社長が講演で面白い話をしている。

複雑系科学から「遺伝的アルゴリズム」という、AI(人工知能)の分野でよく引き合いに出される「巡回セールスマン」の問題解決に活用される手法を適用するものである。

ある都市から出発して、巡回する都市間の距離の合計を最小化する経路を求める問題で、規模が大きくなるとスーパーコンピュータでも解が得られない。

これに、都市を順に回る経路の一つ一つを個体とし、一定数ランダムに作成した最初の初期個体群に対して、「選択」という一定の基準以上の優れたものを残すステップ、残った個体の経路の一部と他の経路の一部を入れ替える「交叉」というステップ、さらにある確率で経路の一部を変えてしまう「突然変異」というステップを加え、このような一連の世代交代を繰り返していく。

この「遺伝的アルゴリズム」を活用すると厳密な解に近い解を短時間で求められるという。

このアルゴリズムを、国内の携帯端末市場に当てはめると、世代交代は十分として、「選択」「交叉」「突然変異」という世代交代が不十分で、通信キャリア主導では、基本的に国内を市場として想定しているため、「選択」の基準が誤ることになる。

また、携帯キャリアの仕様に皆準じているため、初期個体群の数が不十分だった恐れがある。

なお、i-modeなどの優れた仕様もあり、世界市場からは最適解ではないが、国内での局所解にはたどり着いている。

では、このガラパゴス化現象から、如何に脱却できるのか。

第1に、携帯端末メーカー各社が、国内携帯キャリア仕様に合わせた製品づくりという横並び競争から脱却すること。
各社独自の競争軸を考え、アップルのiPhoneのように、画像精細度、厚さ等単純な競争でない領域に挑戦していく必要がある。

第2に、国内市場と同時に、海外市場をメインとする戦略に切り替え、サムスンやLGエレクトロニクスのように、国内市場向けと海外市場向けの開発と市場投入をポートフォリオとして統合的に管理して展開を図ること。

第3に、多様な仕様の携帯端末を自社単独で開発していくのはリスクが大きいため、アップルiPhoneやグーグルAndroidなど異業種成功モデルとの連携を積極的に進めること。

このように、社会現象といってもよいような状況を分析し、原因の解明、さらに対策まで、異なる分野・領域の考え方を適用するのも、目からウロコといった感じもするし、極めて有効なアプローチではないだろうか。