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先月行われたシーネットネットワークスジャパンと首都圏情報ベンチャーフォーラム共催の「Tech Venture 2008」で基調講演を行った経済産業省の村上敬亮さんの話が、改めて最近Web上に紹介されている。

ITのインフラ普及が企業成長をけん引してきた後、3、4年前から、「ITインフラの普及からITをどう使うのか」というトレンドが表面化してきた。
このトレンドに日本企業、日本の産業構造全体が乗り切れていないことが、米Googleや米AppleのようなITインフラをうまく活用した高付加価値を提供し業界全体を巻き込めるような軸となる企業が日本に誕生しない大きな理由の一つであるとしている。

“ライブドアショック”の話題に隠れ、「思考停止状態」で既存の商習慣から抜け出せていない国内産業全体の問題がIT業界全体における真の問題であり、インフラ分野の問題が「脱インフラ」、マーケティング分野が「脱マスマーケティング」と独自の危機意識を展開している。

米国で、ベンチャーに日が当たるのは、それを支える膨大な社会的ネットワークができあがっているからで、ベンチャー企業をサポートするベンチャーキャピタルを始めとした支援層や優秀な起業家や技術者を紹介し合う人材ネットワークという部分においても、日本は米国と比べてその母体が極めて脆弱であるという。

ところで、村上さんが米国駐在時代、主として東海岸に拠点を置いていたが、周囲が西海岸の人たちを見る時の目線が、日本が米国を見る目線によく似ていたという話は面白い。

西海岸の方が、ITに関しては、支援するネットワークの階層性が深く、より先まで見通せるし、より幅広いポートフォリオを組み、いろいろなプロジェクトを支援することが可能になるということである。

西海岸のVCや支援者のネットワークの最上位層は、約13人、だいたい5年後くらいのビジネスを正確に議論している。
その次の階層の人は、3年先、その次の階層の人1一年先、その次の階層の人は、だいたい、今起きていることを正確に議論している。
最下層の人は、今起きていることへの理解も、ちょっと怪しい。

これが、村上さんのベンチャー支援の5階層論である。

上のランクの人ほど、より広い範囲でポートフォリオを組むことが出来るようになり、競争状況や組むべき相手などについて、より正確なアドバイスをもらえるようになる。

逆に、この階層性が深くないと、カバーできるビジネスポートフォリオが狭くなってしまい、ITでは、東は西に勝てないという話になる。
西海岸が5階層なら、東海岸は3階層で、日本は1階層ということになってしまう。

こういった話と関連あるものとして、日本の有力家電メーカーたちの最近の異変がある。

森祐治さんが、論じている件で、多くの総合電機メーカーが、数年前のV字回復を目指した時期にでも積極的には行わなかったコンシューマー向け機器事業からの撤退を、このタイミングで相次ぎ発表している。
東芝のHD DVD、パイオニアのプラズマディスプレイパネル製造、三菱電機、そして三洋電機(売却先は京セラ)の携帯電話端末と、それぞれ事業撤退のニュースなどである。

根底に、「ガラパゴス諸島症候群」あるいは「パラダイス鎖国」といった表現で語られるような、国内市場に拘泥せざるを得ない状況、あるいはその状況に依存した産業構造に最適化してしまい、他の選択肢を選べなくなってしまったことの問題がある。

撤退の対象となった製品は、コモディティ化(低価格化)という一種の境界線を迎えつつある点は共通するものの、依然としてそれぞれの商品は世界では成長市場である。

基本的対応姿勢として、「苦しいときほど、原点に立ち返れ」という教えをもとに、特定の時代や経験ではなく、より高度なプロダクトを作り出すことに価値を置いた気風にこそ立ち戻るべきではないかと論じているのは、まことに的を得ていると思う。

イノベーションとこれによるベンチャーこそ活力のもとであり、何としても、シュリンクせず頑張っていただきたいと念じてやまない。