
対策として、国がもっと研究開発資金を投入して、先進的技術の牽引力を強化して新規事業を増やし、事業基盤を強くすべきとして、産学連携のバックアップを図っている。
こういった背景もあり、今週開催された“ナノテク2008”の中で、文部科学省ナノテクノロジー・ネットワークプロジェクトJAPAN NANO 2008シンポジウムでは、文部科学省、大学、企業、シンクタンク等各界のリーダーが参加して、ナノテクを日本の得意技術分野として確立しようと、中々熱心な議論が行われていた。
ところで、その中で、研究と事業化の両面から整理し方向付けするのに便利な“パスツール象限”という概念が、紹介されていた。
縦軸に基礎性(“理解したい”/研究志向)をとり、上を強、下を弱とし、横軸に応用性(“利用したい”/事業化志向)をとり、右を強、左を弱とした4象限を考えてみる。
右上の象限は、実用牽引型基礎研究で、原因を明らかにして理解の基づく実用考案を行う領域で、これが“パスツール象限”である。
なぜこの名前がついたかというと、パスツールは基本的には基礎科学者であり実利とはほど遠かったが、アルコール発酵の研究で微生物を発見し、アルコール発酵する酵母菌と乳酸発酵する乳酸菌が存在することに気づいた。
そして、発酵、食物腐敗、傷口感染、伝染病が微生物の作用で起こることを証明した。
彼の研究哲学は「応用を目的として、そのために科学的な基礎をしっかりすべきだ」というものであり、科学が実用に役立つことを明言し、研究は応用を目的とすべきだとした点で特異な科学者であったわけである。
左上の象限は、“ボーア象限”と呼ばれ、量子力学で有名な理論物理学者ボーアは、純粋基礎研究理論と実験結果に基づき、原子の構造を説明したが、実用化には一寸無縁の世界を繰り広げた。
右下の象限は、“エジソン象限”と呼ばれ、かの発明王でGEのもとにもなったエジソンにちなみ、因果の究明なしに、試行錯誤的に実験を重ねた方が開発としては早いことに対応している。
左下の象限は、様々な呼び名があるらしいが、“バードウォッチング”とも呼ばれ、このままでは意味を成さない領域ともみなされている。
また、“ブラーエ象限”とも呼ばれ、この謂われは、ブラーエは膨大な天体観測記録を残したことで有名で、このデータを分析してケプラーは有名なケプラーの法則を発見している。
何とか研究のための研究というバードウォッチングに終わらせず、パスツール象限をゴールとして実を結ぶ努力を願うばかりである。