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昨日あたり少し戻してきているが株式市場の下落は激しいものがある。
世界的な同時株安の一局面という要素も勿論あるが、ここ1年の日本市場の低落ぶりは群を抜いている。

大きな要因として、市場全体を支えてきた海外投資家の日本市場からの離脱があると分析する向きが多い。

SBIホールディングスの北尾CEOも、日本の新興市場の問題をインタビューで指摘している。

日本には20世紀型産業しかないというのが外国人投資家の評価だ。つまり新しい産業を育てる仕組みがないということだ。海外のマネーはより高いパフォーマンスを求めてインドや中国に逃げてしまう。

中国市場にはマネーがあふれ、公開後の株価も良好だ。日本よりはるかに魅力的なマーケットがいくらでもあるということだ。日本では上場審査の結果が出るまで1年単位で待たされるのが日常茶飯事だが、シンガポールでは5-6週間で審査が済む。

日本の新興市場では上場後の株価のパフォーマンスも悪い。経営者ならどの市場を使えば新規公開による調達資金や上場後の株価が最大になるかを常に考える。特に2006年1月の「ライブドア・ショック」以降の株価低迷は目を覆わんばかりだ。日本のベンチャー企業でさえ始めから海外上場を目指す例が増えている。08年は日本のベンチャー企業による『海外上場元年』になるだろう。

さらに、日本の市場がリスクマネーを集められない要因として、税制の問題を取り上げている。

確かに、リスクを伴う株式投資からの収益に対し、リスクがゼロに近い預貯金と同じ20%の税率を課しているのはおかしいし、海外投資家にも20%の税率を課しており、海外からお金を呼び込もうという意識もまったくないと見られてもしようがない。

英国では株式に投資すると一部が所得控除でき、リスクマネーの提供にインセンティブ(動機づけ)が働く仕組みになっており、日本とは根本的に考え方が違うという指摘は的を得ていると思う。

一方、竹中平蔵慶応大学教授(元総務相)が興味深い分析をしている。

モルガン・スタンレーのロバート・フェルドマン氏の分析を引用して、日本経済には「CRIC(クリック)サイクル」が存在するという。

1990年代以降の日本経済はたびたび「危機(Crisis)」に見舞われ、そのたびに様々な対応策(Response)が取られてきた。対応策が取られると、その場をなんとか切り抜けて事態が「改善(Improvement」する。しかし改善後はたちまちに政府も国民も「慢心(Complacency)」してしまい改革・改善の努力が疎かになる。その結果、気が付くと再び経済が「危機(Crisis)」的状況に陥ってしまう。結果的に危機→対応→改善→慢心というCRICがサイクルのように繰り返されるのである。)

このような観点で近年の状況を見るとどうなるだろうか。最近の経済を振り返ると、2001-02年ごろは明らかに「危機」の状況にあった。当時、不良債権処理という「対応」が進み、その結果、03年から05年ごろにかけては明確に経済の「改善」が進んだ。05年という年は郵政民営化法の成立が重なって日本の株価は1年で42%という上昇を記録したのである。しかし、ここ数年は改革への熱意が低下し、改革よりも生活重視といった雰囲気が社会を支配する中で、まさに「慢心」の状況となったように見える。

今後、一つ考えられるシナリオは、「慢心」の結果として経済が「衰退(Run-down)」するものである。06年の1人当たりGDPが経済協力開発機構(OECD)で18位に低下した姿は、まさに衰退である。その中で政府も民間もなげやりになって、「あきらめ、責任放棄(Abdication)」の形になるのが最も懸念される。先般の国会演説で、日本経済はもはや一流とはいえないといった指摘がなされた。担当相自らがそのように発言することは責任放棄のようにも見える。

竹中教授の指摘するように、ここは何としても、 日本経済がそうした迷路に入らぬよう、慢心→衰退→責任放棄というルートを遮断しなければならないと強く感じる。