
人の集団には集団特有のパラダイム、すなわち、ある時代や分野において支配的な規範となるものの見方やとらえ方・常識があり、効率的に目標に進む道しるべや出来事を評価する物差しとなっている。
空気のように存在さえ気づかない場合もあるほどで、パラダイムに従って目標が決まり、作業や工程は詳細に分析・解析され、専用の設備が作られ分業化が行われ新たな組織、ルールが作られる。
パラダイム濃度が特に高い領域である中枢には、権力と資源が集中する傾向にあり、パラダイムを維持し強化しようとする力学が常に働いている。
一方、この濃度が低い辺境は、しばしばアウトサイダーとして振る舞う。
辺境は、パラダイム濃度が低いため、常に部分より全体に関心を持たざるを得ない環境にある。
イノベーションの芽は、全体を俯瞰しシステムや仕組みのどの部分がネックになっているかを認識することから削りだされていくので、辺境の方が中枢よりイノベーションを創出しやすい環境ということになる。
典型的な例が、青色発光ダイオードで、世界中の大企業が従来の赤色発光ダイオード系の素材の延長にこだわっていたのに対し、日本の片田舎の小企業、日亜化学(中村修二氏)が世界に先駆けて開発、製品化を果たしてしまった。
一方、成功した日亜化学も今や中枢の位置づけにある訳で、イノベーションの芽を中枢にいていかに創り出せるかの課題に直面することになる。
イノベーションに関しては、クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」が有名である。
企業が魅力ある顧客に高く売れる、より良い製品を作ることで競い合える持続的イノベーションの状況と既存企業の環境に対し、新規顧客や魅力のない顧客群に安く売れる、シンプルで便利な製品を商品化することが課題である破壊的イノベーションの状況では、新規参入者が既存事業を打ち負かしてしまう。
新興企業にとっては、勿論、この破壊的戦略をとるのが最良の手段となる。
一方、成功した企業にとって、破壊的イノベーションを続けるには、IBMがPCを急遽製品化した時のように、別組織をベンチャーとして開発させるのが有力な方法と言われているが、上記の中枢―辺境の考えから、これもよほどマネジメント、むしろ如何に管理せずに我慢できるかということが大事になるのではないだろうか。