
要するに、外部からの入力に対し、一定の閉じたプログラムで処理を行い結果を出すのが前者のチューリングシステムで、それだけでは“偶有的なできごと”を有機的に処理できない。
一方、脳の神経細胞ネットワークは、規則的な面とランダムな結びつきの両面を持ち、その組み合わせで、所謂人間の創造性を生み出している。
「なぜ日本の電機メーカーがインターネットに踏み込めなかったか」という点は、もともと日本の電機産業が国のインフラを支えるという側面の強い歴史があり、政府官公庁、電力会社、NTTといった重要顧客向けに商売していたため、インターネットで何かやろうとすると、社会を支えている仕組みに抵触してしまい、踏み込んでいけなかった。アマゾンやeベイみたいなものを始めると既存の小売・流通構造を破壊してしまうし、ユーチューブなんかメディアがおかしくなってしまう。
また、インターネットと個の関係は、日本はぶどうの房のようなタイプで奥のほうの1粒を取れないし、房を取るとまとめて取れてしまう。
アメリカは、りんごのタイプに相当し、木という組織に1個1個のりんごがあり、ばらばらになっているものをビジョンでまとめていくリーダーシップが必要になる。
この点、日本はぶどうの房だからリーダーシップのあり方も違ってくるということになる。
ところで、カリフォルニアで開催した技術関連会議「D: All Things Digital(D5)」で75分間のジョイントセッションにAppleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏とMicrosoftの会長であるBill Gates氏が随分久しぶりに顔を合わせお互いの評価、ITへの考えなど披露したとの報告が出ている。
リチャード・フロリダという米国都市経済学者が「クリエイティブ・クラスの世紀」という本で、クリエイティビティによって持続的な経済成長を目指すためには、3つのT、経済発展に必要な要素、技術(Techonology)、才能(Talent)と寛容性(Tolerance)があるという。
最初の2つは、自明とし、最後の寛容性については、例えばシリコンバレーのように、なぜある場所が他の場所より技術、才能を引き寄せ留めておけるかに関するもので、開放的で包容力があり最もクリエイティブな人々が集まってくるような地域は、差異を受けいれ、標準から外れたアイデアや情報に寛容であるというわけである。
ただ、日本も若い世代の人たちは違った環境で暮らしてきており、従来とは一寸異質な発想、チームによるビジネスの誕生が期待できるのではないかと思う。