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仕事柄、各種の技術系ベンチャーの創業者や技術責任者(CTO)などと会って話を聞く機会が多い。
特に、基本となる技術の価値について説明を受ける時特に感じるのは、その技術が全体の環境の中でどこに位置し、どこがユニークで競合上優位に立つのか、したがって市場にどういう影響を与えられるかという観点の不足、欠如である。
得てして、狭い範囲での従来技術との比較に力が入り、特許が何件あるなどのPRが多い。
これは、以前勤めていた大手企業で研究陣の人たちとのミーティングでも感じたが、当時はこちらが事業企画サイドにあり組織的にカバーできたが、ベンチャーの場合はそういかず、技術畑出身の創業者やCTOといった人たちが十分にこれをこなさないと事業計画も怪しげなものになりかねない。

野村総研チーフ・インダストリー・スペシャリストの池澤 直樹さんによれば、先端技術は、一般には知られていない、理解されていない技術である。
そのような技術を他人に説明するのは極めて難しくコミュニケーションが正確に成立するためには、テーマについてのイメージが、ある程度、共有されていることが必要である。
先端技術についてのコミュニケーションを困難にする原因はほかにもある。
例えば、先端技術の中身を正確に伝えようとすればするほど、伝わりにくくなるといった側面がある。
事業として期待と実際の成果に大きな乖離が生まれた原因は、多くの場合、上記の不正確なコミュニケーションという。
期待外れだったといった事例:
・ペルチエ素子
・磁気バブルメモリー
・ミリ波導波管
・レーザーカード
・ホログラム
・垂直磁気記録
・コヒーレント光通信
・ジョセフソンコンピューター
・第5世代コンピューター
・セラミックスエンジン
・光磁気記録
・高温超伝導

これらは技術として消え去ってしまったわけではない。
しかし、いずれも期待されたほどの結果を得ることができなかった。
研究所の外から見たら、いわば「やらなきゃよかったテーマ」というわけである。

それにしても、日本の株式相場の立ち直りが遅く、景気回復も遅れ、活力、勢いの無さが目立つ。

宋 文洲さんによれば、日本の大手企業の少子高齢化が進んでおり、時価総額上位50位の会社をリストアップしてみれば、年齢が30歳以下の会社はただ1社ソフトバンクのみだという。
スイスの有力ビジネススクール、IMDが発表した「2007年世界競争力年鑑」によると、日本の競争力がまた下がって24位になったが、その順位を引っ張った大きな要因の1つが「経営者の企業家精神」の低さにある。
なぜ起業が難しいか、なぜベンチャーが大手企業に発展できないか、「日本人の若者がやる気が足りない」とか、「ハングリー精神が足りない」とかではなく、この背景に戦後の製造至上主義がもたらした多くの政策、慣習と固定概念があるという。
企業家精神の後退は企業家の問題ではなく、雇用形態に代表されているような長期にわたって「セイゾウ」という名の長男を優先した結果、人材も集まらないのに事業のリスクが高すぎ、それでも勇気を出して成功する人が多くいるが、諸外国と比較してまだ少数であり、なかなか大手まで成長できないというわけである。

優秀と思われる人材がもっと色々な分野に広がり、起業の形で何度でも挑戦でき、成長にむけて、もっとエンジェルのレベルで資金を出していく構造を作っていかないと、日本全体が本当に老齢化していきはしないかと心配になる。