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野村総研チーフ・インダストリー・スペシャリスト池澤氏が、『老舗企業の「アイデアキラー」たち』というコラムで面白い指摘をしている。

球状のシリコンの上にICを焼き付けるボール・セミコンダクターという半導体を、米国のICメーカーに勤務していた石川明氏が提案したが、同氏が長く米国メーカーで働いており、また発想を練った場所が米国のせいなのか、日本にいたら可能だったかという点である。

日本にも独創的な研究者や技術者はいるのだが、そうした人々が生み出すアイデアを殺してしまう機能、つまり「アイデアキラー」と呼べる機能が存在しているのではないか、さらに他方、日本の研究開発においては独創的なアイデアを創出する人の力「アイデアジェネレーター」が基本的に弱いのではないかと言われる。
研究や開発で独創を追うことは、「アイデアジェネレーター」と「アイデアキラー」という2つの機能が戦うことだという。

研究開発のプロセスには、最小限、もう1つの機能を加えることが必要となる。それは、「アイデアプロモーター」の機能であり、独創的なアイデアが、ただちに広く理解されることは少ないので、誰かがそのアイデアを解釈し、他の人々が容易に理解できるように翻訳することが必要となる。独創的なアイデアを、関係者に対してプロモートする機能とも言える。
「アイデアキラー」の主張を理解し、「アイデアジェネレーター」に対し翻訳、通訳することも、「アイデアプロモーター」が果たす役割である。

「アイデアジェネレーター」の独創を事業につなげようとする場合は、事業化に関係する複数の人材がアイデアの価値を共有し、拡大することが必要で、この拡大のプロセスの中で「触媒」として機能するのが「アイデアプロモーター」であり、アイデアを事業へと膨らませる触媒に相当する。

こういったイノベーションを如何にマネージメントするかは非常に難しいわけであるが、的確な指摘を行っているのはやはりドラッカーのようである。
起業家マネジメントを行うためにしてはならないこととして4つのポイントをあげている。

(1)最も重大なタブーとして、既存の事業部門と起業家的な部門を一緒にしてはならない。
(2)大企業の多くが起業家たちと合弁企業を組んでいるが、成功した例はあまりない。
(3)いかなる企業であろうと、得意な分野以外でイノベーションを行おうとしても成功することは滅多にない。
(4)買収、すなわち、ベンチャービジネスを取得することによって起業家的になろうとしてはならない。

得てして既存企業は簡便な方法に頼ろうと、要するにカネで解決しようと考えがちだがうまくいかず、大企業が起業家として成功しているのは多くの場合自らの人材によって新しい事業を手がけたときであると諭しているようである。
これを逆のサイドからいうと、ベンチャーの取るべき姿勢もハッキリしてくるではないだろうか。