
地球温暖化の問題に熱心に取り組んできた元米国副大統領アル・ゴアのスライド講演の様子を、アル・ゴアの生い立ちを辿ったフィルムを交えつつ構成したドキュメンタリー映画である。
石炭、ガス、石油などの化石燃料の燃焼や森林の伐採によって、大気中の二酸化炭素量が増加しており、その一方で地球の気温は上昇を続けている。 大多数の科学者は地球温暖化がすでに起こりつつあるのが現実であり、それが自然発生的な事象ではなく人類の活動に起因するものだとの見解で一致しているとされる。
グリーンランドの氷河の流出量は過去10年間で2倍以上に増加しているらしく、このままいくと、グリーンランドと南極大陸の棚氷の消失により、全世界で海面が約6メートル 以上上昇して各地の沿岸部は壊滅的被害を受けたり、2050年までに夏の北極海から氷が消えたり、熱波、干ばつや山火事が増加するなど地球上全体での被害が予想されている。
また個人レベルで出来ることをいろいろ具体的にあげてくれている。
例えば、洗濯には水やぬるま湯を使ってお湯の使用量を減らす、乾燥機の代わりになるべく物干し台を使う、再生紙の利用、有機土壌は従来型農地よりはるかに大量の二酸化炭素を取り込んでくれるのでできるだけ有機食品を購入する、過剰包装商品を購入しない、車の整備を心がけ、燃料効率の良いモデルを選ぶetc etc。
ところで、暫く前に『ジュラシック・パーク』などのSFで有名なマイケル・クライトンの“State of Fears”(恐怖の存在)という作品があり、環境保護団体の米国環境資源基金(NERF)が温暖化に世界の注目を集め、金儲けをするために環境テロリストと結び付き、高度にネットワーク化されたテロリストたちが、人為的に落雷・洪水・津波などの大規模な気象災害を起こそうと目論むというスト-リー展開であった。この中で、地球はむしろ大きな時間周期として氷河期に向かっており、「地球温暖化なんてものは存在しない」「現在の温暖化傾向がどの程度まで人間の活動によるのかはわからない」「CO2が温暖化の原因とは言い切れない」など「地球温暖化」に懐疑的な説明を随所においていた。
しかし、世界の学者の大勢は、具体的データを下に温暖化が確かに進行中で、CO2がその大きな原因と断じており間違いないようである。
こんな世の中で、もう15年ほど前にかかれた中野孝次「清貧の思想」にこんな内容があったのを改めて思い出した。
もともと刀研ぎで書、茶碗、蒔絵などで有名な本阿弥光悦の母妙秀は、90歳で死んだが、死んだあとを見ると、唐島の単(ひとえ)物一つ、かたびらの袷(あわせ)二つ、浴衣、紙子の夜着、木綿のふとん、布の枕ばかりで、このほかには何も残っていなかった。人間が生きてゆくためには一体何が必要で何が必要でないかを、妙秀は日ごろよほどに徹底して省察していたのだとわたしは思う。人ひとりが心の充実をはかりながら生きてゆくうえで、住居、家具、着物、食物その他生活のあらゆる面で、何があれば足り、何がなければ不足か、それを考えぬいた末が、およそ極限と思えるほどきりつめた簡素きわまりない所有となって示されたのだと思う。
当時はまだ、消費は美徳で、清貧の生活などされたら経済成長が止まってしまうなどずいぶん批判された面もあったと記憶している。
しかし、米国のビジネス界でさえ、あまり目先の利益ばかり追っているともっと大局的な規模で元も子もなくなってしまうことにようやく気がつき始めたようである。