
最近、このロングテールの提唱者クリス・アンダーソンの“The Longtail”の翻訳も出版され、目を通してみると改めて面白いエピソードなど載っており興味深い。
著者が、2004年初、デジタル・ジュークボックスの会社イーキャストのCEOからジュークボックスに入っている1万枚のアルバムのうち3ヶ月に少なくとも1曲は売れるアルバムは何パーセントだと思うかと訊かれた。ところで、デジタル・ジュークボックスというのは、ブロードバンドでインターネットに接続されておりローカルのハードディスクにダウンロードして保存してある無数の曲から好きな曲を選べる事ができる。
著者は、80対20の法則を踏まえながら、わざわざ訊くのだからと思い切って50%と答えたが、正解は98%という驚くべき数字であった。 これが、ロングテールの発端であるが、わずか2年余り前だったのも一寸驚きである。
いまや、販売形態には、80対20の世界にある「物理的小売業」(物理的店舗の利益の範囲にとどまる)からアマゾンのような「ハイブリッド小売業」(諸経費がいらない小売業者の利益の範囲)へ、さらに、「デジタル小売業」(物理的商品がない小売業者の利益範囲)に広がるに従い、テールの長さを享受できるようになっている。
ロングテールの状態、事実は言葉として騒がれるずいぶん前から存在していたはずであり、指摘されて始めて目からうろこという感じを世間では受け止めているが、先行して感じ取ってビジネスに結びつけることがやはり成功への近道ということになるのだろう。