イメージ 1

和田誠と村上春樹が、”Portrait in Jazz”というタイトルで2冊にわたってジャズミュージシャンをひとりひとり取り上げ、味わい深い文章とイラストを堪能させてくれる本がある。1997年と2001年刊行のものだが、今でもよく拾い読みして楽しんでいる。
特に、私自身が、ジャズに最初に出会った時の感覚と全く同様な出会いの模様を、アートブレイキーの欄で書いているのが何か不思議な感じがする。当時のメンバーは、アート・ブレイキーの他, リー・モーガン, ベニー・ゴルソン, ボビー・ティモンズ, ジミー・メリットなどであったが。

・・・・その中で、“生まれて初めて、「モダン・ジャズ」に触れたのは、1963年のアート・ブレイキー+ジャズ・メッセンジャーズのコンサートだった。・・・・
メンバーはフレディー・ハバード、ウェイン・ショーター、カーティス・フラーらの若手がフロントをつとめる、新編成のモーダルな3菅セクステット・・・・今から思えば時代を画する素晴らしいラインナップだけど、そのときはぜんぜんそんなことはわからない。リズム・セクションはブレイキー、シダー・ウォトン、レジー・ワークマン。ちょっとだけ出てきて唄う歌手はジョニー・ハートマンだった。・・・・
そのときに僕がいちばん強くひきつけられたのは、トーンだったと思う。6人の意欲的なミュージシャンたちの生み出すトーンはいかにもマッシブであり、挑発的であり、ミステリアスであり、そして・・黒かった。どうしてかはわからないが、僕はその音を色彩的に黒く感じたのだ。もちろんステージの上にいるミュージシャンが全員黒人だったという視覚的な理由もあるだろう。でもそれだけではない。僕が彼らのトーンそのものから感じた色が、まさに黒だったのだ。それも真っ黒ではなく、チョコレートが少し混じった、深い黒・・・。

やはりいつまでもモダンジャズの世界からは離れられそうもない。