
東洋経済新報社「知的資産の価値評価」(山本、森)などを参考に、評価手法を整理すると、次の3つの方法になる。
(1)知的資産の経済的寄与(インカム)を推計し、経済的寄与を積み上げて価値を計算するインカム・アプローチ。
企業価値や事業評価の算定に多く用いられるディスカウント・キャッシュフロー法(DCF)に代表されるが、将来のキャッシュフローの割引現在価値を知的資産の価値とする。実際には、その知的資産がすでに製品に活用されているか、まだ製品化の過程にあるかなどで変わってくる。
(2)現時点で、知的資産を再作成する場合に要するであろうコストの総額を価値とするコスト・アプローチ。開発コストをかければ同じ経済的寄与をもたらす資産が複製できると考えられる場合で、組織 労働力、流通ネットワーク、製品ソフトウェア、業務慣行・手順などの価値評価に適している。
(3)評価を行う知的資産に類似した知的資産を調査することで、その価値を類推しようとするマー ケット・アプローチ。実際には、株価やM&A取引額などを参考とするが、多くの場合、知的資産は企業全体または事業部単位の売買における価値の一部のみを形成しているため適用できるケースは少ない。
いずれも推定する上で色々の仮定、想定をしないと出てこないわけで、結果として大きな差が出てくることになるのは止むを得ない面があり、結局、当事者同士の値ごろ感による調整が必要になる。