
原題は、起業家以外読むべからずといった趣旨だが、最近よく見られる底の浅いベンチャー起業家でなく、本格的起業家とはどんな人達でその苦労・悩み、希望・喜びはどうかについてなど書かれている。
冒頭に、「会社を設立すると、あなたは極めて特殊なクラブ、恐怖のクラブに所属することになります」とあり、その恐怖とは起業家が意思決定をするときに襲ってくるもので、はらわたが捩れるような独特の痛みがあり、安眠することは許されず、悪夢にさいなまれ続けるという。
大切なのは、一度目を通過してしまうことで、恐怖をありのまま認識し慣れてしまうこと。
恐怖を操る能力、恐怖と共に生きる能力は起業家が成功するために唯一の最も重要な能力であり、必要な要素である。
また、起業家には2種類ある。ひとつは海賊、狩猟民族のタイプで、戦いを始めるのが好きで、見知らぬ海岸、未発見の土地に突撃し先住民を全員殺し、金を全て盗み、女性を全員強姦し無茶苦茶に過すようなタイプ。
ただし、国家、あるいは会社を築き上げるなら別のタイプの起業家が必要になる。これが二つ目の農民のタイプで、木を切って家を建て、土を耕し、コミュニティを作ることに精を出す。
これら二つの性格がなくて、成功した大企業はない。
起業家が通らなければならない四つの段階を紹介しているが、第1の段階は「天才起業家時代」で、希望、楽天主義、幸福感、興奮に満ち溢れたアイデア、夢を見る段階であり、皆を磁石のように引き付ける。
第2段階は「カリスマ時代」で自分自身を完全に信じ、会社のあらゆる面を支配し社員が息苦しくなるほど完全に掌握している段階で、起業家の会社人生のうちで多分最も幸せな時代。
次いで第3の「存在感のない社長の時代」で、組織が意思決定するときに自分を頼りにしているわけではなく、従業員は起業家よりも同僚を信頼し始める段階で、「手放す」時である。
最後は第4の「ビジョンを持った指導者の時代」で、コミュニケーションや協力、協調がその特徴であり、大きな企業を創り育て成功するという起業家の本来の夢がここで実現する。
なお、日本人は狩猟民族のDNAが足りないので起業家は育たないと厳しい見方をしている。日本の文化と起業家は対立するもので、起業家精神は買えるものではなく、日本は恐竜化する運命にあると見ている(見ていた?)。
原著が10年前に書かれたもので、その後の日本の停滞を見、盛んに大学発ベンチャーなどの政策を推進しようとしているのを見ると、これも的を得ているのかなと感じさせる。