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夢といえばフロイドがまず連想される。

神秘主義と科学の結びつきを認識していたフロイトは、夢が無意識の願望が姿を変えたものという仮説をたて、本能を体現する原始的な恐怖や願望が意識のある心の中に入り込み、そのまま体験されず心のセンサーで睡眠の邪魔にならないシンボルに変えられるというわけである。
普通の人は目覚めたときにそのシンボルの意味を正確に読み取れないので、所謂精神分析家に頼んで自由連想による誘導でこの暗号を解いてもらう必要があるとした。
前回、紹介した”知の挑戦”にこのへんの状況が出ているので簡単に紹介したい。

より近代的な仮説は、生物学の活性合成モデルで、夢見は脳の記憶装置の中で情報を再構成、編集する際の副作用で、睡眠中は感覚入力がほぼ全て途絶え、意識活動する脳は、脳幹から発生する刺激で内部から活性化されるが、イメージを作って首尾一貫した物語にするという通常の働きを果たそうとするものの、刻々の感覚情報入力がないため、外界の現実とのつながりがもてず、脳は自力で最善をつくす、即ち空想を作り出す。

夢見の分子的基盤は部分的とはいえ解明されており、特定の神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニンなどのアミン類)の量が減少し、同時にアセチルコリンという別の神経伝達物質が増加して眠りが発生する。これら神経伝達物質は、それぞれ感受性のあるニューロン結合部に作用し、前者は脳を覚醒させ感覚系と随意筋のコントロールを仲介し、後者のアセチルコリンはこれら器官を停止させる働きがあり、こちらが優勢になると意識の脳の活動性が低下してくる。
夢見の引き金は、REMと呼ばれる状態で、脳幹のアセチルコリン作動性ニューロンが激しい活動を開始、この波動刺激が視床、後頭皮質に伝わるが、ここは視覚中枢であり体が動いているという誤った情報が伝わるため幻覚を生じ、記憶の保管所からイメージや物語を引っ張り出し、外界の情報から制約を受けないまま、実際の空間や時間の前後関係や一貫性も欠落した状態で、脳は大急ぎでイメージを構築することになる。

夢見に近い状態というのは現実世界でもあるもので、外界に余り意を介さず自己中心的な状況に身をおいていると、例えば、北朝鮮のように彼ら自身の論理では閉じているかもしれないが、世界から見ると全く常軌を逸している行動となる。これは、企業経営でも、程度はまるで違うが自己論理に走る危険というものは常に存在するということを忘れてはならないだろう。