
企業の業績が芳しくない時、その原因はイノベーションの投資が浪費に終わっていることにある。競合他社と同じようなプロジェクトに投資を行ってしまっており、真の差別化は得られない。
これらの企業は、「クラスの最上級を目指す」という考え方の罠にはまっている。適切な目標は「他社より上位に立つ」、つまり、競合他社が追随できないレベルの差別化を行うこと、または「必要にして十分」つまり市場が求める標準レベルをクリアするが、それ以上を追求しないということだ。「クラス最上級を目指す」戦略には必要最小限以上の投資が必要になるが、その一方で顧客が高価格を支払ってくれるほどの差別化は達成できない。プロジェクトは完了しても、期待する効果は得られない。最上級を目指す精神は賞賛に値するが、結果として得られるものは浪費である。
差別化を作りだす企業活動の「コア」は、顧客の購買意思決定における決定要因で、イノベーションが重要な役割を果たす。一方、この「コア」以外の全ての企業活動(「コンテキスト」)は重要ではあるし高く評価する必要があるが差別化の源泉ではない。
イノベーションを永遠に続けていくための基本は、コンテキストに費やされている経営資源を抜き出して、コアに再配分するということである。
例えば、タイガー・ウッズからコアとコンテキストの間でどのように時間配分をすべきか問われたら、時間の時間を全てコアに集中させ、コンテキストは誰かを雇って任せれば良いと助言すべきである。
ウッズが「僕の収入の90%はコンテキストからのものなんだ。コアからではない。それでもコンテキストには時間を使うなと言うのかい?」と言っても、「勿論だ。コンテキストから得られた収入でよりコアにフォーカスすべきだ。それが最終的に最も効率的な道だ。」ということになる。