
事故で80分しか最新記憶が持たない老数学者である博士、時間決めで生活の世話をする家政婦(主人公)とその息子(数学者から”ルート”と命名される)、博士の義姉で若い頃博士のひそかな思慕の相手だったらしい母屋の住人が主な登場人物で極めてシンプルな構成です。
主人公の誕生日2月20日即ち220と博士の記念腕時計の裏に刻まれた番号284が”友愛数”といって、自分以外の約数を全部足した数字がお互いに相手の数字になるという非常に稀な組み合わせであったり、阪神タイガースファンという横糸など面白いフレームワークになっています。
他に、フェルマーの定理やオイラーの公式など中身は別にして名前は聞いたことのある数学の世界、何というか整った美しさといったものが随時提示され、作品全体の基調を与えています。
一寸別な話になりますが、近年、米国映画によくテーマとなる父と息子は離婚家庭が多いという背景がありますが、この博士とルートも勿論血は繋がっていない訳ですが、同じ世界を感じさせます。
博士が施設に入り死の直前まで訪れ続け、野球選手の後中学校の数学の先生になる”ルート”と博士(勿論主人公もですが)の交情はまさに父と息子の関係のように感じさせます。