今回はITビジネス関係から一寸離れ、最近読み返した藤沢周平の「漆の実のみのる国」に関してです。これは御存知のように貧窮のどん底にあえいだ米沢藩の上杉鷹山と執政達の話ですが、藤沢さんは一度上杉鷹山と重臣竹俣当綱(たけのまたまさつな)による藩再建物語として「幻にあらず」を書いており、20年近く経ってから又このテーマを手がけ絶筆となっています。これは文春文庫版の関川夏央さんの解説にあるように「・・・おりしもバブル経済は文字どおり泡のように消え、日本は不況下にあった。再建・改革に名を借りた、企業のいわゆるリストラへの動きが急となり、上杉鷹山がその先達としてもてはやされた。藤沢周平はそんな風潮に反発して、そのあまり、鷹山伝説の実情を明らかにしようと志したのだった。彼は反骨の人、静かな闘志の人であった。・・・」というのが本当の所だと思います。最近グローバル化と称して特に米国スタイルの実績評価主義を過度に言い立てているのは、例えば富士通での導入失敗例や、逆にキャノンの御手洗さんのように米国での経験が長い故にその問題点をよく理解しそのままは採用せずに成功している例からみても見直しが必要なのは間違いないでしょう。私自身も若干米国との関わりがあり、米国文化・スタイルには良いところが多く好きなのですが、根幹の所はやはり違っており、日本としては今後少子高齢化の進展で人口も中クラスに落ち着いていくわけで、米国のようなジャブジャブの消費過多文化を離れむしろヨーロッパ的な省エネなど物を大事にしていく文化の方が拠って立つのに好ましいと感じていくのではないでしょうか。それにつけても最近奥田日本経団連会長がバブルの兆候、危険を指摘したようですが、2度と馬鹿なことを仕出かさないようにしたいものです。