交通刑務所*体験記

交通刑務所*体験記

交通刑務所 ―――
この言葉を聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべますか?

これは交通刑務所の中の一つである<市原刑務所>に入所した、私の体験を綴った記録です

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市原刑務所において、最も規律が厳しい場所は単独室棟だ。


ここに収容されるのは市原に来たばかりの新入者か、規律違反を犯した人間だけであるからだ。


比較的監視の頻度も多めで、ちょっとしたことでも注意されることがある。


それでも他施設に比べれば、まだまだ緩い方じゃないのかなとは思う。


移送前にいた施設では、室内の壁によりかかっただけで物凄い剣幕で怒鳴られることがあった。


市原では特に禁止されていないので、存分に壁によりかかることができる。


こんなつまらないことでも、随分と気持ちの余裕が違うものだ。



私が単独室棟に着いたときはちょうど昼食の時間だった。


室内には小さい座卓に昼食が用意されており、それを食べるように指示される。


「来たばっかりで食欲なんてないって・・・」と内心毒づきながら、座卓に向かった。


記憶が定かではないが、コッペパンにミネストローネのようなものだったと思う。


市原刑務所での食事については後々詳しく書いていきたい。



食事が終わると、単独室棟担当の刑務官から、差し当たって必要な規則などの簡易的な説明を受けた。


最終的に「詳しいことは備え付けの書類をよく確認するように」とか言われる。


このやる気のない投げっぱなし感が市原刑務所クオリティーである。



その後、ちょっとした広間のような場所に移動し、官物の貸与が行われる。


官物とは文字通り「国から支給・貸与される物」の総称である。


刑務所での生活において、最低限必要な物品が配布される。


例えば、刑務作業中に着る工場着や、石鹸や歯ブラシ・歯磨き粉、下着類などがこれに当たる。


既に私物として購入した物がある場合、官物は貸与されない。


工場着などは私物として買えないので、これらは自動的に貸与されることになる。



また、市原刑務所独自の官物として、「通勤着」がある。


これは刑務作業をするための工場に出役するときや、所内での講演などで受刑者が着る正装のようなものだ。


いわゆる市原刑務所版スーツである。


とは言っても、見た目は上下グレーの作業着みたいな代物なので、期待してはいけない。



爪切りや髭剃りはまさかの個人貸与である。


これには少し驚いた。


他施設では刑務官に申し出ないと借りれないような代物なのだが、


それが市原では自己保管することになる。


特に爪切りなどは刃物なので、厳重に管理されるべきじゃないのかと思うのだが・・・。


そういう煩わしさがないので、一受刑者としてはありがたいことではある。



官物の貸与が終わると、それらの所持品を入れておくための鍵付きのバックが与えられる。


基本的にこの中に自分の私物や官物などの所持品を入れて、自己管理していくことになる。


私物が多いとバックに物が入らなくなってしまう場合があるが、


その時は入るようになるまで何かしらの私物を廃棄しなければならない。



ちなみに、最もかさばる物は「本」である。


市原の受刑者の大半は本の管理に苦悩していたようにと思う。


私もハードカバーの小説やマンガが多く、移動時に何度も泣きを見た。


本はバックも圧迫しがちで、その他の所持品の管理が大変だった。


効率の良いしまい方を受刑者同士で熱く議論したこともあった。



刑務所ではつまらないことで頭を悩ませられることが多い。


私の受刑中はその繰り返しだったように思う。



市原刑務所は他施設と比べて、とても小さい刑務所である。


市原刑務所の収容人数は公式では400人程度とされているが、


実際に収容されている人数は200人前後となっている。


一般の刑務所では1000人以上が収容されていることを考えると、


市原刑務所がいかに小規模な刑務所であるかがお分かりいただけると思う。




身体測定と領置調べが終わると、次に称呼番号が与えられる。


称呼番号とは、その刑務所で受刑者を識別するための固有の番号のことだ。


称呼番号は刑務所における名前と同義であり、様々な場面で使用されることになる。


原則、刑務所ではプライバシーへの配慮から(あってないようなものだが)苗字で呼ばれるので、


同姓の人間と区別する意味もあるのだろう。



市原刑務所で与えられる証拠番号は、私が収容されていた時期では399番までとなっていた。


称呼番号は刑罰や刑期によって、以下のように区別することができる。


1~99   : 禁固刑の受刑者


100~199 : 2年以上の懲役刑


200~299 : 1年以上2年未満の懲役刑


300~399 : 1年以下の懲役刑



市原刑務所においては、4年以上の刑期の人間は入ることはできないようである。


一部例外的に収容されるケースもあるようだが、


基本的に4年を超える刑期の人間は一般刑務所に移送されてしまうそうだ。


最近の交通事案に対する社会の厳しい目や、判決が重罰化している現状を考えると、


もしかすると収容することができる刑期の引き上げがなされるかもしれない。



なお、300番台の受刑者には刑期が半年以下のような人間も珍しくない。


私が知る中で、最も短かった人は4ヶ月だった。


その人は市原刑務所に入ってから、1か月程度で仮釈放をもらって出所していった。


これでは反省も後悔も何もないんじゃないかと思うのだが・・・。


他の受刑者から「社会科見学か!」とよくツッコまれていた姿が思い出される。


元気にしているといいが。



話が大きくずれてしまったが、称呼番号の言い渡しが終わると、すぐに単独室に送られることになる。


緊張感の欠片もない穏やかな雰囲気に飲まれながら、私は職員に連れられて単独室に入った。


単独室とはその名の通り、受刑者1人だけが入る個室である。


3畳程度の広さに水洗トイレと洗面所がついており、木製の棚が備え付けられている。


報知器(職員に申し出などをする際に使用する機器)は手動ではなく、職員直通のインターホン。


ラジオ用のスピーカーには音量調整スイッチが付いている。


大きい窓には鉄格子などはなく、全面ガラス張りで、窓の外には芝生で覆われた綺麗な風景が見える。


言わずもがな、汚れなど一つない真っ白な新築マンション級のピカピカ快適空間である。




「ここ、刑務所だよな・・・」


私は思わず口に出してしまっていた。




「本当にここは刑務所なのか?」


それが、私の市原刑務所に対する第一印象だった。



まるでどこかの美術館のように白く輝く建物。綺麗に舗装された道。


軽く乗り越えられそうな脱走防止とは思えない何かのオマケみたいなフェンス。


廃墟と言っても過言ではないボロボロの他施設から移送されてきた私にとって、それは衝撃だった。



車内での刑務官同士の会話から察するに、どうやらつい最近改装が終わったばかりらしい。


「これはいいタイミングだったな」


私は不謹慎だと自らを叱りはしたが、正直な所そう思ってしまっていた。



刑務官に促され、移送車から降りる。


手錠が視界の中で揺れる。腰縄がただただ煩わしい。


逮捕されたときに、涙が出るほど苦痛だった物も何度もされると慣れてしまうものなのだろうか。



刑務官の後に続き、近くにある部屋に入る。


入った部屋は汚れ一つ無い、綺麗なマンションの一室のような場所。


すぐに身体測定と領置調べが始まった。



身体検査では身長・体重・血圧などのほかに、刺青やピアス穴、傷跡の場所まで調べられる。


これは受刑中に自らの身体にイタズラをさせないためだろう。


交通刑務所でそんなことをする人間はいないと思うが、一般刑務所では多々あることらしい。


出所時にこの記録と照会し、もし傷が増えているようなことがあれば、


その場で仮釈放が取り消しなんてこともありえない話ではないようだ。


刑務所側の管理責任として大きな問題にされたくないという意味合いもあるかもしれない。



「領置調べ」というのは、要するに物品の検査である。


刑務所の内に持ち込める物、持ち込めない物を全て仕分けして、リストにまとめる。


刑務所では持ち込める物品はかなり限られてしまう。


原則、刑務所内で購入できるもの以外は全て不許可になる。


所持金もすべてチェックされ、厳重に管理される。



身体測定や領置調べに関しては、一般の刑務所とさほど違いはなかった。