突然だけど私のメイン画像についての説明~♪

この絵は『猫とイラストと鉛筆な日々』ってサイトからもらってきました☆

超可愛くて小説のイメージにぴったりだったんですw

可愛い画像がたくさんだから見に行って損はナシっっ!



私はおもちゃ?!
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あれから数日後の日曜日―――。
無事、私は退院し今先生の家の前に来ています!

「ここでいいよね~? あー緊張するな」

それというのも、昨日先生が急に誘ってきて脅されたから来たんだけど……。
来なかったらどうなるか分かってる? ってどっちを選ぶにしても危険だよ……。
にしても、きれいなアパートだな。
もうちょっとボロいかと思ってたのに、残念。

「ういーっす」

チャイムを鳴らすと中から間抜けな声が聞こえた。
約束の時間どおりに来たから私だと分かったんだろう。

「約束通りに来たよ。誰かに見られてたら知らないからね」

「大丈夫だって、ほら入れ」

偶然か不幸か先生の家は私の家から超近かったし。
絢さんの言ったとおり、見つかって退職させられたらどうしよう。
私だって停学は覚悟しなきゃいけないかも?!

「心配すんなって、勉強教えてもらってたっていえばいいじゃん」

一人勝手に慌てふためく私の心中を察したのか先生はそういった。
そっか、そうだよね。
言い訳すればなんとでもなるか。

「そうだね。あとさ、ひとつ確認するけどなにもしない?」

家に入ってしまうともう二度と戻れない気がするから私は一応確認しておいた。

「うーん、里桜次第?」

「じゃあ帰る!」

ニヤついて言った先生のその言葉に私はクルリと背を向けた。
せっかくの日曜に先生の家に来て襲われたなんてなったらたまったもんじゃない。
私、心がせまいのかな?

「嘘だって! 見せたいもんがあんの、来て」

一応先生に向きなおりはしたものの、まだ躊躇する私。
ならくるなよって話なんだけどさ。
奥に入ってしまった先生の背中を目で追いながら迷うこと数秒。
私は意を決して玄関に足を踏み入れた。
先生はドSだけど私が本当に嫌なことはしないし、信用してみるかなっ。

「見せたいものって何?」

そんなに長くない廊下を歩き、私は聞いた。
奥の開いてる扉の先はリビングだろうか。

「見てみたら分かる」

返ってきたのはそんな素っ気ない言葉。
私は、何か早く見たくてうずうずしながらリビングに入った。
まず目についたのは中くらいのテレビに右に置いてあるベット。
そして小さな一人掛けのソファ―。
一部屋だけだから少しせまい。
左に目を移してみるとそこには、私が立ってるあたりに背を向け何かをしている先生。

「わっ。子猫だ!」

ひょいっと覗くと、そこにはゲージに入った子猫がいた。
生まれて間もないのか、私の手より少し小さい。

「かわいーだろ? 里桜みたいだよな」

「えー、私こんなに可愛くないよ」

笑いながら私は子猫を見つめる。
あどけない顔でこちらを見上げる子猫。
超可愛い!

「抱いてみるか?」

「え、いいの?! 抱く抱く♪」

ゲージから出された子猫はきょろきょろとして、その場から動こうとしない。
そっと抱き上げてみると、手にすり寄ってくる。
すごく暖かくてふわふわ~!

「かわいいな、こいつめ」

指先で子猫の鼻をちょいっとつつく。
みゃあと鳴く子猫。

「やべえ!! 里桜とそっくりじゃん、その猫!!」

先生が顔を真っ赤にさせて叫んだ。
びくっと子猫が身を震わした。

「ちょ、声大きい!!」

「だって、あー! 可愛い!!」

じたばたとする先生は学校とは少しイメージが違う。
無邪気で明るい。
学校ではクールでいじわるだったのに……。
そのギャップ、反則でしょ……?

「里桜? どうした?」

ぼんやりと先生を見つめていた私はハッとなって子猫をゲージに戻した。
見とれてた、なんて言えない!
口が裂けても!

「それより、この子猫どうしたの?」

照れを隠すように私は慌てて聞いた。
先生は少し笑ってソファーまで歩き腰掛けた。
ちょいちょいと手まねきする先生。
それって一人用でしょ?
どう座れと。
近くに来て首を傾げる私に先生は自分の膝を叩いた。

「座れよ、話してやるから」

「え、うん……」

若干照れながらちょこんと先生の膝に座る。
背中を密着させられるとドキドキが伝わってきそうで少し怖い。

「んー、小さくてクッションみてえ」

それは褒められてるのか、けなされてるのか微妙だけどどちらにせよ嬉しかったのは確かだ。
後ろからぎゅっとされると、すべてを任してしまいたくなる。

「あの猫はな、絢が飼ってる猫の子供。お前が入院してて俺が寂しがってるからとか言って、くれた」

別に寂しくねえのに、そう言って笑う先生の表情はここからでは見えないけれどきっと無邪気な顔で笑ってる。

「絢さんが? 優しいとこあるんだね、意外に」

「ああ、お前に似てるから寂しくないでしょ? って言ってたぞ。ほら」

そう言ってどこから取り出したのか携帯を私に見せる先生。
確かにそこには絢さんらしい文面で『私があげた子猫、あの子に似てるから寂しくないでしょ。感謝してよね』と書かれてあった。
つい照れてしまう。
絢さんがそんなことを?
少しでもの罪滅ぼしだろうか……ていうか仲直りしたんだ、二人。
妬けるなー……ってそんなことないから全然!!

「先生の携帯って白なんだー。私と同じだぁ」

先生の携帯を奪いじっくり見る。
先生らしいシンプルな白の携帯。
私と同じ色だったからついはしゃいでしまう。

「お、マジで? 携帯見して?」

「いーよ」

よっと先生の膝から降りてそこに放りだしてる鞄をあさる。
すぐに携帯は見つかった。

「これだよ。あんまり派手じゃないけど」

そう言って先生に携帯を渡す。
私の携帯はストラップが一個しかついていないし、シールとかも貼ってないからシンプルっていえばシンプルだ。
ついてるストラップはお気に入りのクマちゃん。

「へえー。なんかほとんど同じだな。運命?」

ははっと笑う先生のその言葉にドキッとする。
運命?
携帯だけだけど運命だったらすごいよね?

「んー……」

先生は少し悩んだ素振りを見せ、私の携帯を操作し始めた。
器用に左手で自分の携帯も。

「何してんの?」

「メアド交換」

先生は決定キーをおしてそういった。
め、メアド交換!?
嘘嘘、ほんとに!?

「これでいつでも連絡可能♪」

はいっと携帯を私に渡す先生。
携帯を開くと確かに、先生のメアドがあった。
登録名は……彼氏。
こんな恥ずかしい名前で登録しないでよ!!

「それでいつでも分かるだろ?」

「は、恥ずかしすぎるよ!」

「だって先生で登録したらバレるじゃん」

う、まあそうだけど。
照れより嬉しさが大きいから許す!!

「ニヤつきすぎ。あー、にしても今日はいい一日だな。昼間に呼べばよかった」

確かに今は夕方だから一緒にいれる時間は短い。
先生曰く夕方だったら大丈夫だろうって言ってたけど、短いとやっぱ寂しいや。

「また来週来いよ。今日は送るから」

「ううん。一人で帰れるよ。だってすぐそこだもん」

「そか? じゃあ玄関先まで」

車のキーを出しかけた先生は再びしまって、立ちあがった。
私も携帯を鞄に片付け、立ち上がる。

「ばいばい」

子猫にお礼を言って玄関に向かう。

「あの猫の名前、みおでいい? 里桜と似てるし」

「ん? いーね!」

振り向き親指をたてて笑う。
先生もつられて笑う。
今日は本当に楽しかった。
子猫と遊んで、先生とメアド交換して。
ましてや家の場所まで知れた!

「じゃ、里桜。また明日」

「ん、また明日」

そう言い終わると先生は屈み、私にキスした。
何回しても慣れないな、このドキドキには。

「反則すぎるよ……っ」

私はそう言って急いで先生の家を出た。
後ろ手に扉を閉め、ずるずると座り込む。

「先生、大好き……」

顔を真っ赤にさせて私は鞄から携帯を出し握りしめる。
反則だらけの先生。
幸せだらけの休日。
今の私は溶けてしまうくらい幸せかも……。

『楽しかったね。また明日』

そうメールを送り、私は立ち上がる。
夜風が私の黒髪を揺らす。
明日からまた楽しくなりそう―――。
「で、条件ってなんですか?」

私は静かに尋ねた。
絢さんは待ってましたとでも言うように、にやりと笑った。

「簡単よ、あなたにも想像つくでしょう?」

「別れて―――ということ?」

「ええ、そうよ」

やっぱりね。
ドラマとかでこういう展開は見たけどリアルにあるんだ……若干納得してしまった。
ドラマで迫られた人は冷静で、いつもどうして冷静でいられるのかって思ってたけど自分がこういう状況にあればよく分かるというものだ。
人は窮地に追い込まれるほど冷静になっていく――――。

「残念だけど私は別れるつもりはないよ。ましてや私たち……」

「だめに決まってるでしょ!?」

今日付き合ったばかり、と言おうとしたらいきなり絢さんは声を張り上げた。
あまりの声に私はビクリと肩を揺らす。

「私は、あんたとは違う。ずっとそばで亮をみて支えてきた。なのに……どうして」

絢さんの目はみるみる怒りの色に染まっていく。
けれど私は反抗しなかった。
人を愛する気持ちは誰でも同じだから。
それが普通の愛か、超えてしまった愛かの違いだ。

「それは、先生が決めたことでしょ? 私たちがどういっても仕方が……」

「あなたが!! 亮と別れてくれたらまたきっと戻ってくる! だからお願い、亮を傷つけて。そしたら亮は私のものよ」

その言葉に冷静だった私の頭で何かが切れる音がした。
自分のためなら人を傷つけてもいいというの?

「それは間違ってるよ。確かに私が傷つければ先生は戻ってきてくれるかもしれない。けど、絢さんはそれでいいの?」

傷つけられた元恋人を再び彼氏にするということだよ? 私はそう付け加えた。
それはもうほとんど人の気持ちを弄んでるに等しい。
絢さんの気持ちは分かるけど、間違ってるものは間違ってる。

「どうしてあんたに説教されなきゃならないわけ!? 私はあんたとは違うのよ、分かる?!」

刃物を突きつけ、怒鳴る絢さんはここが病院などとは忘れているようだった。
完全に我を忘れている。
その姿にゾッとした。
好きという気持ちはそうまでして人を変えてしまうのか。

「絢さん、落ち付いて。話をしよう?」

身体を起こしてそう声をかけるが絢さんは聞いていないようだった。
亮さえ、戻ってきてくれたらいい―――そんなオーラだった。
ていうか私的にはあの先生にここまで好いてくれる女性がいたことにびっくりなんだけど。
まあ私も好きだからなんとも言えないけど。

「もういいわ、あんたにはお仕置きが必要みたいね」

何も言わない私に絢さんは刃物を振り上げた。
唐突の出来事に私は咄嗟に目を閉じた――――。

「絢?」

けれどいつまでたっても痛みは襲ってこなくて聞こえたのは、あの声。
昼間、キスして別れたあの人の声。

「りょ、亮?」

そぉっと目を開けてみるとそこには刃物を振り上げた状態の絢さんがいて、その後ろの入口に先生がいた。
明らかに襲ってます的なシーン。
誰がどう見ても、だ。

「お前、何してんの?」

「あ、違うのよ。これは誤解――」

絢さんが言い切る前に、先生は絢さんに歩み寄りふりあげた状態で静止しているその手をはたいた。
ぱしんっと大きくも小さくもない音が部屋に響いた。
カラン……と刃物が落ちる音も少し後に響いた。

「んなあぶねーもん俺の玩具に向けんなよ」

「……はい?」

今まで黙ってなりゆきを見ていた私もその言葉に反応する。
え、そこ普通彼女とかいうところじゃないの?!
ってかまだ玩具だったんだ、私……。

「玩具……? でも亮、さっきは彼女って」

手を押さえ戸惑う絢さんに亮はふっと笑うと絢さんの顎を持ち上げた。
朱に染まる絢さんの頬。

「あいつは玩具という名の彼女なんだよ、覚えとけ」

「意味分かんない、なんで? なんであの子なの?」

朱に染まった頬で泣きそうになりながら絢さんは消え入りそうな声で問いかける。
さっきまでの妖しげなオーラはもうなくて、絢さんはただの『恋してる女性』になっていた。

「生徒よね? 犯罪なんだよ? 亮、やっと教師になれたのに辞めさせられちゃうよ?」

「知ってる、バレなきゃいいんだよ。んなこと百も承知だ」

「本当に、好きなの?」

絢さんの問いかけに私はごくりと喉を鳴らした。
先生はどう答えるのだろう?
また馬鹿にするよね、きっと。

「ああ、好きだよ」

ほらね、馬鹿に……ってええ!?
今なんと!?
いくら昼間、彼女になれたからって先生の性格が素直になるとは思えないんだけど!!
第一、こんな夜中に来るってことはまたよからぬことを考えてたに違いないし。

「馬鹿……馬鹿馬鹿!! もう知らないんだから!!」

ありきたりなセリフを吐いて絢さんは先生の手を振り払い部屋を出て行った。
扉くらい閉めていってよ……とかどうでもいいことを私は思っていた。

「照れた? あの言葉」

にひひと先生は何事もなかったかのように笑う。
どこまで平和なひと……私がどんな目に合ってたと思ってんのよ?
まあ絢さんは本当はモロいことは分かったし、最初から危害など加える気はなかったのだろうな、とは思うけど。

「別に、照れてなんかないし?! 第一、絢さんいいの?」

「何が?」

「あんな綺麗な人、おしいよ?」

おずおずと上目で先生をみる。
先生は困ったな、というように髪をかきあげた。
不覚にもきゅんとする。

「あいつ、確かに形では付き合ってた。けど中身はあいつの思いすごし!」

迷った挙句、といった感じで先生はそういった。
形?
思いすごし?
不思議そうな顔でいる私に先生は話し始めた。
絢さんとの過去を――――。

絢さんと先生が付き合い始めたのは先生が教師になる前だった。
それまでは絢さんはずっと先生の傍で支える立場だったらしい。
けれどある事件が起きて先生は絢さんと形だけでも付き合うことにしたんだって。
もちろん絢さんには本当に付き合ってるふりをしながら―――。
ある事件とは絢さんのストーカー事件。
あまりにもひどすぎるというわけで、そのストーカーの前で絢さんに想いを伝えたんだって。
そうすることでストーカーを諦めさせられるかも、と思ったそう。
もちろん半分は嘘も入っていただろう。
けれど絢さんはそれを信じ切ってしまって、ストーカー事件が終わってからもそんな関係が続いた、と―――。

「ま、しゃあないか」

しゃあないで済ませる問題じゃないと思うよ、先生?
でも先生は絢さんに真実は伝えなかったのだろうか。
そんな質問がでてきたけどあえて聞かなかった。
先生には絢さんを守ってあげたい、そう思える部分がどこかにあったのだろう。

「先生の過去、少し知れてうれしいな……」

ふいにでた言葉。
ハッとした時にはもう遅くて、ニヤニヤの先生の顔が迫っていた。
しまった、この人がドSなのを忘れていたよ。

「それはどういうことかなぁ、里桜ちゃん?」

「別にふかーい意味はないです、はい」

「深い意味はないのに言ったの?」

うぐっ。
どこまでも痛いところをついてくるな、この人は。

「それより! なんで先生ここにいるわけ?!」

顔を近づけてきた先生を押し戻しながら私は慌てて聞いた。
絢さんもそうだけど、面会時間すぎたら入れないんじゃないの?

「ん? テクニック、だな」

セクシーなポーズをしながら言う先生に私は冷たい眼を向けると無視して話を続けることにした。

「どうせまたいたずらしにきたんでしょ?」

「お、突っ込み無しだが勘は鋭いな」

変な言いまわし……。

「やっぱりね、なんか昨日もそうだったよね? デジャブ?」

昨日も準備室で助けられたっけ。
つくづく私はドジだな、なんて思う。

「あんさー、もう我慢できないんだけど。していい?」

人の話は無視ですか?!
てかこの人どんだけ直球すぎるの!?
いやまあキスだけならいいかなぁーなんて、私もなに考えてんのよ!?

「待っ……」

「待たない」

素早く本日二度目のキスをする先生。
そのキスはさっきまでの出来事を忘れさせてくれるような優しい一瞬だけのキスだった。

絢さんも好きだったんだよね。
人を愛するということは素敵だよね。
今なら絢さんの気持ちが分かる気がする。
こんなガキが大人のこと分かるなんてわけないけど。
ほんのちょびっとだけ分かった気がしたんだ。
人を愛するということ、それはすごく幸せ。
でも辛いっていうことを――――。
「んじゃ、俺もう戻る。ゆっくり寝とけよ? 泣き虫けが人」

私から体を離し、クスッと笑う先生。
その言葉に少しムカっとする私。
泣き虫は余計だって……。

「泣き虫じゃないもん」

ふくれてそういうのが今はやっと。
幸せすぎて何も言えない、というのが現状。

「とか言って泣きそうだぞ? これから俺の彼女になるのにそんくらいで泣いてどうすんだよ」

「っ!」

あっさり恥ずかしげもなく言う先生はやっぱりいじわるだ、と私は思った。
そしてちゃっかりこれから起こることを説明してるような――――。

「じゃーな」

顔を真っ赤にさせている私を軽く流すと先生は病室を出て行った。
途端にまたズキズキと痛む身体。
痛みさえも忘れる幸せってことか。

「せんせー……の彼女、かぁ」

妙に間延びして私はつぶやきベットに横になる。
そういえば私は先生のこと何も知らないや。
私が彼女になるのはいいけど、元カノっていうかそういう類の人はどうするんだろう。
後先考えずに告白しちゃったけど……。
心配だな。

変な心配を抱きつつ私は目を閉じた。
さっきのことが思い出されて顔が赤くなりそう。
唇にまだ先生の暖かさが残ってる気がするくらい。
後に私は幸せの余韻に浸りながら深い眠りへと落ちていった―――。

+ + + + +

ふとした視線を感じ私は重い瞼を開けた。
ずいぶん眠っていたらしい。
辺りは真っ暗だった。
そんな暗闇に浮かぶ一つの影。
私が目を開けたのに気がつかないのかその影はゆらゆらと扉辺りを動いている。
ま、まさか幽霊?!

「だ、誰?」

恐る恐る声をかけてみる。

「あら、目が覚めたのね」

ほっと私は安心する。
幽霊なら返事しないから、きっと看護師さんか誰かだったんだろう。
声は女の人のものだ。

「いけない子猫ちゃんね、こんな可愛い顔して」

いつの間に近くに来たのか、その女性は私を見下ろしていた。
看護師さんじゃ、ない―――!
その素早さに若干驚きつつ、私は喉を鳴らした。
窓から差し込む月明かりで分かるその顔は美しかった。
ぼんやりと照らしだす月明かりがよりいっそう、そう見せたのだろう。

「何を言っている――」

疑問の声をあげかけたとき、私の目は何かの光でくらんだ。
とっさに目を閉じる。
少しして目を開くとそれは携帯電話のディスプレイだった。
一瞬ではなんの画面か分からなかったけど、徐々に目が慣れてくるとそれがなんなのか分かった。
―――笑った顔の先生の待ち受け。

「亮の写メよ。わかるでしょう?」

私はハッとした。
この人、先生と知り合いだ。
呼び捨てにするということはかなりの仲良しか。

「う、うん。だって副担だから……」

「そう。それだけ?」

「え?」

女性はパタンと携帯を閉じると私を睨んだ、ように見えた。

「私は中原 絢。亮の彼女」

淡々というこの人――絢さんは先生の彼女だった。
でも私はなぜか泣いたりはしなかった。
多少なりともショックは受けたが、どこか心の中では覚悟してたから。
20代で彼女がいないっていうのも珍しいしね。
でもどうして彼女さんがここにいるの?

「亮も物好きね、こんな小さな子、それも年下を好きになるなんて」

じゃああなたは年上?とは聞かなかった。
小さいは余計だ、いくら自分が大きいから(サイズじゃないよ)って……。

「何しに来たの? っていうか面会時間すぎてますよ」

「知ってるわ。その方が都合いいもの」

妖しく笑む絢さんは大人のオーラを醸し出している。
先生と並ぶと絵になるだろうな、と思ってしまうほど。
私がなにもできずに絢さんを見つめていると絢さんは鞄からあるものを取り出した。
月明かりにキラリと光るそれは―――鋭利な刃物だった。

どうして絢さんは私と先生が付き合ってる(?)ことを知ってるの?
どうしてそんな凶器を私に向けるの?
どうしてここに来たの――――?

様々な疑問が浮かぶほど、私は冷静だった。
教師と付き合うのだからこういう危険くらいは覚悟してた。
さすがに元カノの登場にはびっくりだが。

「殺しはしないわ。条件をのんでくれたらね」

もう……すべてを運命に委ねよう。
私がどうあがいたって狂った歯車はもとには戻らない。
狂わしてしまったのは私だけれど――――。

暖かい……。
すごく暖かいものに包まれてる気がする。
その暖かさが体中の痛みを緩和していくみたいだった。

「里桜ー! 里桜!」

どこかで誰かが呼んでる。
私は気だるく目を開けた。
そこにいたのは翔だった。
あの暖かさはもうない。

「よかった!! 目が覚めた……って泣いてるの?」

ハッとして私は頬に手を当てる。
私、泣いてたの―――?

「そんなことないよ、ここ……は?」

頬の涙をぬぐい翔に聞く。
けど聞くまでもなくそこが病院だということは分かっていた。

白い壁、白い天井で。
ただ何かを聞かないと不安が押し寄せそうだったから。

「病院だよ。沢渡が運んでくれたんだよ」

「先生が?」

ぎょっとして目を見開く。
だって私はフラれたも同然だったわけでしょ!?
なんで先生が……。

「俺も詳しいことは知らないんだ。偶然、学年主任の先生が里桜のこと話してて……飛んできた」

照れたように笑う翔。
そうだったんだ。

「ありが……」

「里桜!」

私がお礼を言おうとしたときだった。
私の名を叫びながら部屋に飛び込んできたのは先生だった。
今は何時か分からないけれどあの出来事の後だ。
まともには顔を合わせられない。

「荒谷…なんでここにいるわけ?」

息を切らした先生は眉間にしわを寄せる。

「飛んできたんですよ。心配だったから」

「おまえ、今日学校だろ? 早く戻れよ」

先生の言葉は冷たい。
何にかは分かんないけど本気で怒ってることだけは確かだった。

「先生に言われなくても戻りますよ。でも」

「なんだよ」

「あんまり里桜をいじめないでくださいね? 僕の未来の彼女なんですから」

翔は不敵な笑みを浮かべて先生に挑発してる……ように見える。
それって告白?
でもなんで?!

「か、彼女って……馬鹿じゃないの?」

今まで黙っていた私は険悪な空気を破るためにわざと明るく翔をけなした。
今は喧嘩してほしくない……ましてやここ病院だし。

「馬鹿じゃないよ、真剣。たとえ里桜が別の人を好きでも俺は待ってるから」

ベットに片膝をつき翔はそういうと私の頬にそっとキスした。
途端に真っ赤になる私の顔。
先生はそれをどう受け取ったかは知らないが無理矢理翔を私から引き剥がした。

「早く戻れ、サボり」

低くそう言い放つと先生は翔を部屋から追い出した。
急にしんとなる病室。
空気が重い……重すぎる!

「あの~……私、どうして病院に」

「馬鹿野郎」

はい?
重要な質問を遮って生徒をけなす人がいますか!?
しかも馬鹿野郎って……。

「隙がありすぎんだよ」

「す、隙?」

何がなにやらわからない私は首を傾げる。
頭には大量のハテナマーク。

「キス、されてんじゃねえよ」

「え……やきもち?」

ふいに出たその言葉に私はハッとする。
そんなわけない。
だって私は玩具だから、やきもちなんて妬くわけ――――。

「だったら悪い?」

顔を背ける先生の顔は赤い。
何で何で!?
だってさっきはフったじゃん。
期待、してもいいの―――?

「俺さー、ツンデレなんだよね」

私のベットに腰をかけながら先生はそういって頭をかく。
ツンデレ?
それって……。

「まさか泣くとは思わなかった、ごめん」

「べ、別に……泣いてなんかないし」

とは言っている私の目には大粒の涙が。
それっていいんだよね?!
そういう意味にとっても……。

「里桜は可愛い、好きだよ」

「ふえ……?!」

泣いてる私の頬の涙をぬぐうように優しくキスする先生。
翔にされたときは比べ物にならないくらい私の顔はゆでダコ状態。

「正直、お前が階段から落ちた時焦った。俺のせいかもって」

耳元でささやく先生の声は優しくて暖かい。
ああさっきの暖かさは先生の腕だったんだ、と今更感じた。
運ばれてたから、あんなにも―――。

「そんなこと……ないぃ」

「里桜はすぐ泣くんだな、俺が泣かしてるみたいじゃん」

「う、嬉しいの!」

ぐすぐすと鼻をすすっているから説得力ないかもだけど。
すごく、すごくうれしい。
今なら死んでもいい……かも。

「里桜、こっち向いて?」

どきっとした私は首を振る。
こんな泣いてる顔、見られたくない!

「こっち向かないと襲うよ?」

「……!」

私はすぐさま先生の方を向いた。
襲われるなんてたまったもんじゃない!

「正直でよろしい。これ―――ご褒美な?」

「んっ……」

唇を重ねる先生。
前の私なら絶対抵抗してただろう。
でも今は、先生の背中に手をまわし身を任せている。
幸せだった。
ここが病院、私が怪我人ってことを忘れるくらい幸せな瞬間だった。

私は思ったのです。
たまには怪我するのもいいかな――――と。
明日からはどうなるか分かんないけど、今が幸せだからいいよね……先生?