9月7日(日)21:00~21:50 NHKスペシャル「よみがえる浮世絵の日本
~封印が解かれた秘蔵コレクション~」を観た。見て損はない内容だったが、期待したものとは違っていた。
私が何を期待したかというと、この番組のキャッチフレーズにあった。
番組PRのスポットでも、番組が始まりタイトルが出るまでのつかみでも、「写楽を超える、写楽をもしのぐ、幻の絵師歌川国政」という惹句が聞こえてきた。
これを聞いて、日本文化に少しでも関心のある人なら見ない人はいないだろう。この私もこの言葉に魅かれ、その浮世絵を見てみたいと思い、チャンネルを変えられなかった。
この歌川国政の絵について、アメリカの浮世絵研究家や、日本のオーソリティらしき人の賞賛の声も添えていた。
私が観た印象は、日本のコミック漫画のクローズアップされた顔に似たものだった。最近、日本のコミックのキャラクターのようなフィギュアや絵が高額で取引されているが、それらの作品に似たものを感じた。
しかし写楽の絵より優れているとは私には思えなかった。写楽の大首絵以上に大きく誇張して描いてはいるが、線も色使いも無駄が多く、訴求力が弱い、と私には思えた。
私の見た画像は、古いアナログテレビの劣化した映像であるから、実物なり精細なデジタル映像を観た場合の印象は違ったものになるかも知れない。
また、私は絵について何一つ専門的な勉強をしたものではないから、学者先生がこれはすごいと言われれば反論する術を持たない。
しかし、50分の番組のうち、この歌川国政について割いた時間は15分程度だった。この番組を作ったスタッフが本当に国政を写楽より凄いと思ったのなら、取り上げ方も違ったのではないだろうか。
この番組の趣旨は、「スポルディングコレクション」研究によって明らかになった浮世絵史の一端を報道することにあったのだろう。歌川国政や歌川(安藤)広重が、顧客の嗜好変化や版元の要求によって画風を変えなければならない苦悩を描いていたし、鈴木春信が錦絵を出すまでに試みた露紫で描いた版画なども紹介した。
だがこれでは一般受けしないと思い、派手なキャッチフレーズをつけることになったのだろう、と私は思う。
そのお蔭で私もこの番組を観ることができたのだから、何も文句はつけられないのだ。しかし観ている途中から、こんな誇大宣伝が許されていいのかと反芻してしまった。
民放ではよくあることだ。だが天下のNHKではないか。視聴率なんか見向きもせず、良質な作品を作っていけばいい。そうすれば、それにふさわしい視聴者は付いてくるものではないだろうか。
NHKの、民放的な迎合化、低俗化を感じることがある。これについてはまた取り上げることがあるかもしれない。
最後に忘れないで書いておこう。ナレーターが上手いので誰?と思ったら、坂東三津五郎だった。