明日は12月24日。

この日サークルの集まりでだいぶ夜遅くなった。

今から電車に乗るのも面倒だし、明日もこっちの方でクリスマスパーティー誘われているし、友達の家に泊まることになった。

家の主の名はノブ。

彼女がいるにも関わらず他の女の子にも手を出している、所謂『チャラ男』である。

クリスマスパーティーもこいつに誘われた。

ノブはまた他の女の子と知り合いたいだけだ。

男の夜の会話の話題といったらもっぱら女関係の話が多くなる。

この日も自然とソッチの話が盛り上がっていった。


「ケンは最近色恋沙汰無いわけ?」


俺が元カノを引きずっていることを知らないノブが不意に話を振ってきた。


「まぁ、地元の女の子と気が向いたときに会ったりしてるよ。」


元カノを引きずっていることを悟られないために適当に話を作った。

それに1年以上も女性と関係を持っていないなんて、恥ずかしくて絶対に言い出せなかった。


「ふ~ん、そうかそうか。俺はまたセフレ増えた。」


結局ノブは自分の話がしたかったのだ。


「お前○○サークルのササキマリコって知ってる?」


ササキマリコ?

思い当たる節はなかった。


「そいつとヤリまくっちゃってるわけよ。」


こいつはホントに猿みたいな奴だな。

でもノブの話はいつも新鮮で面白かった。
9割9分女の話だが、俺が経験したこと無い話を沢山してくれる。

でもそれは自分に関わりが無い話だったから面白く聞けていたんだろう。




ササキマリコ…か。

特に気にもとめなかった。

今回も俺には関係の無い話だ。
高校時代は音楽に没頭していた。

何バンドも掛け持ちをして、文化祭などではほとんどの時間ステージに立って演奏をしていた。

この時の経験が今の仕事に繋がっている。
恋愛も人並みには経験してきた。

意地を張って別れて後悔したり、彼女のちょっとした欠点を見つけてしまって、勢いで別れて後悔したり。

幼い恋愛をいくつか繰り返した。

月日は流れ大学進学の時期になった。

入試も面接だけでエスカレーター式に進学出来ると言うこともあり、生徒の大半が付属大学への移行を選んだ。

もちろん俺もその楽な道を選んだ。

学部なんて何処でも良かった。

俺は何を血迷ったか、当時付き合っていた彼女と同じ学部に行くことを志望した。

その数ヶ月後には2人は別れ、彼女は後輩の男と付き合う事になっているなんて思いもしなかった。

同じ学部を選んだアホなカップルは大学の授業で顔を合わせる度に妙な気まずさを感じていた。

大学に入学して数ヶ月経った頃、その子を見かけることが無くなった。

人づてで聞いた話によると、どうやらその子は大学を中退したらしかった。

正直その子の事を吹っ切れずにいた俺は、少なからずショックを受けていた。

もうそれ以上の恋なんか出来るはずが無いと思っていた。



彼女は付き合うことの楽しさを教えてくれた。
話は高校時代までさかのぼる。

勉強嫌いな俺は受験の直前に、無理やり押し込んだ知識でなんとか某私立高校に合格する事が出来た。

その高校は受験で入学した新入生と、付属の中学からエスカレーターで入学した移行生が半々の割合で在校していた。

新入生、移行生だからといって変な意識もなく、すぐにクラスのみんなと打ち解けることが出来た。

みんなからケンと呼ばれ仲良くしてもらっていた。

自分で言うのも何だが、女子からもある程度は人気だったと思う。

誤解しないで欲しいのが、別に顔が良いからモテた、とかそう言うことではない。

男女関係なく相談に乗ったり、こっちから何でも相談したりしていたので、女子からすると俺は同性の友達という風になっていたんだと思う。

実際女子だけの飲み会に何度も誘われて、完全なる『お話聞き係』みたいになっていた。

クラスの女子がそんな感じで俺と接している中、1人だけそうでない子がいた。

その子は中学からの移行生でクラスのマドンナというか、下手したら学校のマドンナ的存在の子だった。

確かに顔は可愛いとは思ったが、ネコ目のせいで目つきが悪い様な気がしていた。

要するにまるでタイプではなかった。

みんなにもてはやされて高飛車になっているんじゃないか、と勝手に思い込んでいた。

別に嫌いなわけでは無かったが、俺から近づこうとも思わなかったし、向こうも同じ様な感じだったのだろう。






これが俺とフジイアヤコとの出会いである。

この時はまだアヤコが俺にとってかけがえのない存在になるなんて、まるで想像もしていなかった。

2人がそうなるのはまだ何年も先の話である。