神谷イタル。雑記。 -3ページ目

神谷イタル。雑記。

松竹芸能で漫才師というお仕事をやっております。
大半の時間をソシャゲとアニメに費やしております。
思いついたことをつらつらと書き綴っておりますのでよしなに。

-1st day-

 

 

 

(これはいったい、どういう風の吹き回しですの!?)

 

今日は学校が終わってから雑誌の取材があった。

月ストがBIG4になってからというものスケジュールは分刻み、とまではいかないが多忙を極めていた。

そんな中、仕事終わりに立ち寄った事務所でマネージャーから掛けられた声は予想外のものだった。

 

「すずは明日のオフ、何か予定はあるか?」

 

(いえ、これは罠かもしれません。最近の鬼のようなスケジュール。ここで何もないと言えばまた仕事を詰め込まれるだけですわ!)

実際のところ、これといった予定は無いのだがとはいえ疲労が溜まっているのも事実。

その上、学校の宿題もたんまり出ている。

ここで貴重なオフを潰されてはたまったもんではない。

宿題をやるかどうかは別の話だが。

 

とはいえ、

 

(これは普通に考えれば…デデデ、デートのお誘いですわよね!?)

 

最近思っている。

マネージャーは見かけに寄らず鬼だ。

一つ仕事が終わったかと思えば次の仕事。

延々と走り続けるマラソンのような日々だ。

いや終わりがないからハムスターの滑車のようなものだ。

ぐるぐる走り続けるけどこのマネージャーはもっと走れと言い続けてくる。

そういえば芽衣はどこか走るハムスターっぽくもあるかもしれない。

 

(でもオフを返上してまで働かせようとまではしませんわよね…)

 

そう。

マネージャーは鬼だけど優しい鬼だ。

走り終わったらちゃんとヒマワリの種をくれて褒めてくれるのがこのマネージャーだ。

だから皆信用している。

もちろん、私も。

 

「あぁいや、何も予定が無いなら一緒に出掛けないかと思って。」

 

ずいぶんと長い事考えこんでいたのかもしれない。

こちらの様子を察して先回りしてくれたようだ。

このマネージャーのこういうところが……良いところだ。

というか、

 

(やっぱりデートのお誘いでしたわ!?)

 

今までも二人で出掛けたことはある。

しかしそれは何かきっかけというか理由があってのもので、こうしてストレートに誘われるのは初めてかもしれない。

 

(しかしこの魅力的なレディを目の前にすればなんの不思議もありませんわね…)

 

「何か予定があるなら…」

「何もありませんわ!」

 

食い気味に答えてしまった。

実際何も予定は無いし一緒に出掛けたいなら断る理由も無いし鬼のようなマネージャーとはいえ普段お世話になっていないと言えば嘘になるしまぁ一緒に出掛けるくらいの事をしても罰は当たらないだろう。

宿題はまぁどうにかなるでしょう。

 

「マネージャーも明日はオフですの?」

「あぁ、抱えていた仕事も一通り落ち着いたからな。すずはどこか行きたいところはあるか?」

 

行きたいところ。

最近忙しくてやりたい事もたくさんあるけどここは。

 

「あら、レディをエスコートするのは殿方の仕事ではありませんの?」

 

 

 

-2nd day-

 

 

「すず…ちょっと待ってくれ…」

「あら、もうお疲れですの?」

 

充実した一日だった。

買い物をしたり、カフェに行ったり、映画を見たり…隣の方は始まって10分で寝息を立てておられましたが。

まぁお疲れなんでしょう。

 

「ずいぶん体力がついたんじゃないか?」

「あれだけお仕事を詰め込まれたら嫌でもそうなりますわ。」

 

厭味ったらしくそういうとマネージャーは少し困った顔をする。

 

少しだけ前を歩く。

同じリズムで、同じ歩幅で、存在感を感じる距離で、少し後ろを付いてくる。

この距離感が心地いい。

 

いつもの公園。見慣れた景色。

でも二人きりで歩くのはいつも通りじゃない。

 

夕陽が少しづつ海に沈んでいく。

今日という日が終わればまたいつもと同じ日常に戻っていく。

代り映えしないわけではないけど、走り続けるハムスターだ。

 

「今日はどうして誘ってくださいましたの?」

 

結局分からなかった。

今日一日はまるで、というかそれはもう完璧にデートだった。

練られたプランというわけではないけれど、とても心安らぐひと時だった。

だからどうしてもこの一日が終わる前に確認しておきたかった。

分かっている。

このマネージャーは何の理由もなく担当アイドルをデートに誘うような人ではない。

心優しい彼だからこそ、自分の大切なオフを使ってまで、私に付き合ってくれているのだ。

 

私が立ち止まるのに合わせて立ち止まる。

少しだけ悩むような困った顔をして、すぐに私の目を見て口を開く。

 

「月ストが5人に戻って、BIG4になって、それは本当に素晴らしい事だと思う。ただその、琴乃にまたセンターを譲って、それはもちろんすずも皆も納得してる事だとは分かってるんだけど…」

 

変なところでかっこつかない人だ。

まぁそこが彼らしい。

 

「私はそんなに頼りなくて?」

「いやそうじゃないんだけど…」

 

「確かに琴乃にセンターを譲ったのが悔しくないと言えば嘘になりますわ。」

 

きっと言葉にしなくても、もう伝わっている。

 

「ただこの成宮すずはそんなに弱くありませんわ。」

 

でもこの人を安心させるためにはっきりと言葉にする。

 

沈みゆく夕陽を背に受けて。

 

「あなたがマネージャーを務めたことを誇らしく思えるよう、私、成宮すずはまた月ストのセンターに返り咲きます。

そして、必ず、アイドルの頂点に立ちますわ!」