空蝉 「うつせみ」


もはや盛夏。

誰かが決める梅雨明け宣言の前に
自然は反応した。


Voice   of   iTaro

気温33度
今年最高温度の東京

きっちり出立した。

今は、発声練習のような慣れない声で鳴いている。

地中に6年、地上で約1か月。

懸命に生きる姿が夏の音になる。



天気予報は外れた。

狐の嫁入りの後
束の間
晴れ間が拡がってきた。

風が涼しげで
葉を揺らし葉を擦る音が新鮮に感じる。


以前に比べると随分
天気を気にするようになったものだ。

いい天気ですね。と声を掛け合う
大人の会話を少し理解できる。

雨上がりに自然が
目覚めるイメージ

ザ・スタイル・カウンシルの
マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ~
ユーアーザ・ザ・ベストへと続く。

多感な頃の清涼剤だった。

夏の頃には
部屋でいつも流れていた。

あの頃の映像が溢れてくる。

青かった。

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予報通りに雨はあがり
ツバメの様子を見に行った。


Voice   of   iTaro



いつもの様に巣のある看板に目をやった。

無い !

瞬時に複雑な気持ちが駆けめぐる。

昨日までそこにあった巣が
キレイさっぱり
取り去られている。



しばらく続いた雨の中、
姿が見えなかったが
奥にいるのだろうと思っていた。


随分、雛は大きくなっていたので
家族で飛び立ってしまったのか?
それとも悲劇が見舞ったか?

駅の係の人に聞いた。

「出発して行きましたよ」。

簡単なその言葉に
色々な想いが訪れた。

そうか旅立ったのか。

このあたりのツバメは多摩川あたりに
集結して
餌の取り方や飛行訓練
様々なトレーニングを施し
東南アジアにむけて海を渡ると読んだことがある。


無事であれば何よりである。

満ち足りない気持ちを引きずって
その場を立ち去った。




しばらくして
所用で駅に向かった。

すると後ろ方から
気配がする。

振り向けば
流線型の黒かげが
飛んで来る!

即座に理解できた。

戻ってきた !

スーッと
以前と違う看板に降り立ち
バランスをとりながら

巣のあった場所を眺めていた。

どういう意味であろうか?

Voice   of   iTaro


Voice   of   iTaro


カメラのファインダー越しに

一瞬、

彼と目があったような気がした。


すると
勢いよくキックして飛び上がった。

翼を拡げて

駅の上を三・四度旋回すると

西南の曇り空に飛んでいった。

見送った。


お別れだなと悟った。

来年も無事に戻ってくるといい。


巣もパイロンも撤去された
駅はいつも通りになった。

この2か月の出来事はとても素敵だった。