まさか、恥ずかしいんか君。
「君の職業は何かね?」
「はい。僕の職業はエンターテイナーです。」
「エンターテイナー!?自分で言って君、恥ずかしくないのかね?」
「はい。全く恥ずかしくありません。」
「君には恥ずかしいと思う事はないのかね?」
「はい。皆無です。」
元芸人のエンターテイナー。恥ずかしい事など何もない。
仕事が終わり、いつも行くセブンイレブンへ。
ご飯を買う為だ。
毎日、仕事で料理を作るせいか、自分のご飯は全く作る気がしない。
だから、ここで買って帰るのが、ほぼ日課である。
今日は、いつもと違い、やけにレジが混んでいた。
何やらキャンペーンの、くじ引きのせいだった。
500円以上買えば、一枚くじを引けるらしい。
ジュースやら、サンドやら、結構当たりが多く、店員も取りに行ったりと、忙しそうに動いている。
やっと自分の番が来て、二枚引いて下さいと告げられる。
適当に二枚引き抜く。
店員「おめでとうございます!!」
何か当たった様だった。
あまり、くじ運が良くない自分が、珍しいと鼻で笑う。
店員もこの時点では何が当たったのか、わかっていない様だった。
二人して何が当たったのか、カードを覗き込む。
ジャンボソーセージ 150gカルシウムたっぷり

とてつもなく、恥ずかしい物が当たってしまった。
二人とも、下唇を噛み締め、震えた声で、言葉を交わす。
店員「本日、持って帰られますか?」
イタリー「はい。もちろん。持って帰ります。」
もちろんと言う言葉が店員のツボに入ったのか、唇を噛み締める力が強くなったのがわかり、こちらも笑いをこらえるのがいっぱいで、目が血走るのがわかった。
店員「では、取りに行ってきますね!」
イタリー「はい。お願いします。」
お願いしますって!!こんなどうでもいいお願い初めてや・・・。
後ろに並んでいる客が、ジャンボソーセージを必死で探す店員を、元ソビエト連邦の工作員の様な冷ややかな目で見ている。
メンズエッグに出てきそうなカップルは半笑いで見ている。
ヒソヒソと聞こえる、メンズエッグカップルの言葉の中に、確かに「ジャンボソーセージ」と言う言葉が微かに聞こえ、この上ない、ジャンボソーセージへの恨みと憎しみを抱く。
店員、早よ戻って来いや!と何度も心の中で叫ぶ。
やっと、見つけたのか、あほみたいに、でかいソーセージを持って来る。
でかっ!!
絶対いらん・・・。
でかっ!!
店員「お待たせして申し訳ありません。」
多分、今までの人生で一番どうでもいい待ち時間。
店員「お弁当は温めますか?」
イタリー「あっいいです。」
昨日も聞いてたやん!っとツッコミたくなったが、噛み殺す。
店員「お箸は一膳でよろしいですか?」
このまさかのカウンターパンチの様な言葉に、唇を絶頂に噛み締める。
イタリー「い・い・い・一膳で・・・。」
ジャンボソーセージを箸で食うやついるか?
二膳って言うた方が良かったのか?
店員も自分がおかしな事を言ってしまったと思ったのか、完全に唇をチャックしている。
イタリア語で言うなれば、カテナチオだ。
二人とも、ものすごい顔で笑いをこらえている。
まさに、足を怪我しながらも、逆転優勝した時の、貴乃花の般若の様な顔で、決して笑わなかった。
素晴らしい店員だ。
ナイスファイトだった。

さすがに、帰りの車で、羞恥心の様な笑いが、どっと押し寄せて来て、一人で笑った。
こんな事で恥ずかしがるとは、まだまだエンターテイナーの道は険しいな~。