後部座席から花をとり、車を降りる。
「10分くらいでもどるから」
「わかった。10分ね」
高校からの友人はいつもと変わらない調子で返事をしてくれる。突然‘墓参りについて来て欲しい’という言葉に何も言わず来てくれた。そういうところが大好き。
花を持って墓の前までいく。白い息がマフラーにかき消され、熱い吐息となった。正直水が痛いし、あまり時間がないので花を変えるだけにする。
「今年も来たよ」
誰もいないクリスマスの霊園。夏と違って周りを気にすることなく声が出せる。
「雪、降ってきたね。この分だと夜すごい冷え込みそうだと思わない?」
・・・・・。
「あのね・・・、もう少しだから。もう少しで全てが終わるから。だから・・・、だから待っててね」
視界が少しずつにじんでいく。毎年のコトだ。気にすることはない。
少しずつ後ろに下がり車へ向かう。
「おまたせ」
「ん。寒いから、ラーメンでも食べに行こう。おいしいとこ調べてたから」
「わかった。醤油ラーメンのおいしいとこがいい」
「残念、鶏ガラ塩の行列店。別にいいでしょ」
「よし。出発しんこー」
あと、少し・・・・・・・・
3年前のクリスマスに私の彼氏、江藤 隆晃は死んでしまった。あっという間の出来事。二人で一緒に過ごすはずで少し遅れるという連絡が入った直後のことだったらしい。
‘通り魔’。バカみたいな事実。クリスマスなのに彼女のひとつもできない人が私と江藤くんの会話をきいていたらしい。 妬み・嫉妬そのほかにもイロイロ。らしい。その人は逃げたから、何も知らない私にはすべてに‘らしい’がつく。
たまたま近くにいた他の人が私たちの会話から刺されて倒れるとこまでの一部始終を見てたらしい。
憎いと思った。
奪った人が、何もしなかった人が、何もできなかった私が。
それは3年たった今でも・・・・・・
墓参りから4日後の昼下がり。年の暮れの近づいた今日、いつもと同じよう微妙に浮かれた軽い空気が人々の周りを飛び回るころ。私は一人の男性を訪ねていた。
「ーーーさんですね?」
「そうだけど、誰?」
目の前にいるのはクラスに男女問わずいそうな友達の多いタイプ。
「・・・・・・・・ごめんなさいっ」
目の前の人が言葉を失ったのが分かった。
それは突然謝ったから?
それとも包丁で己の腹を切ったから?
「あなたが3年前の通り魔ですよね?」
3年間、ずっと探し続けた。追い求めて。あきらめられなくて。ずっと。ずっと。
向こうは忘れてしまったのだろうか?
かまわない。
「・・・ねぇ、あなたに分かりますか?突然失った恋人の重さが。一気に黒に染まった私の日々が。ねぇ。ねぇ???」
「ーっ!!そんなことより救急車っ!!」
「そんなこと・・・・?」
どんどん血が流れているのがわかる。
「私ね、決めたんです。復讐しようって。だから・・・」
朦朧としてきた頭を持ち上げ前の人を見る。
救急車を呼ぼうとしたらしい手にした携帯電話をダランとさげ、ポカンとこちらをみている。
「今からあなたに呪いをかけます・・・・」
ふと、こういうのがあほヅラっていうのかもと思い笑えてきた。
「ーーーーー。」
ね?少しの間だったでしょ?これからは一緒だよ。ずっと。