ここ数か月、いくつかの大手企業におけるIT資産管理プロセスの設計プロジェクトに携わることになった。
企業内のIT資産管理プロセスやIT資産管理サービスプロバイダとしてのIT資産管理プロセスの双方のプロジェクトがあったが、いずれにしても、サービス管理プロセス(インシデント管理、問題管理、変更管理:リリース・展開管理)への考慮を行ったうえで、標準化から廃棄まで数十におよぶプロセスの目的やプロセス間インターフェースなど、数百ページにおよぶドキュメントとフローチャートの作成プロジェクトは時間と労力を要する作業であることは間違いない。
しかし、IT資産管理プロセスのそれぞれの目的やプロセス間インターフェースを明示し、部門横断的なステークホルダーを渡るワークフローを設計していなければ、
何を自動化し、何故自動化したいのか、をステークホルダー全員と共有し、共通の理解を確立することは不可能だ。
さらに、自動化設計を行う際に、具体的なプロセス毎の明確な目的が共有され、最終的には管理項目などに落ちていなければ、自動化ツールで何を処理し、アウトプットとして期待するのかをツールメーカーと議論することなど不可能といえる。
つまり、これらの設計が無ければ、ツールメーカーの提供する機能を、「とりあえず運用する」という結果となり、目的を持って期待するアウトプットを生成することはできない。
プロセス設計書の作成は、コスト高に思えるかもしれないが、「組織のプロセス資産」の設計書は、反復性のある、質の高いプロセスを実現する。
一方で、ツールに依存してきた体質は、ツールの使い手である「匠」の属人的な技に依存し、サービス管理プログラムとの整合や、セキュリティ管理プログラムとの整合の妨げとなるだけでなく、サービスモデルへの移行を困難とするのは火を見るより明らかだ。
プロセス設計書の作成は、確かに、時間や労力のかかるコスト高に思える作業ではあるが、サービス プロバイダとして存続するためには必要不可欠な重要な能力といっていいだろう。