ITサービスとは? | 国際IT資産管理者協会 武内烈

国際IT資産管理者協会 武内烈

新しい価値提案の能力が求められるIT部門。
サービスモデルの実現には不可欠な「サービス資産・構成管理」、「IT資産管理」。
サービスプロバイダとしてのIT部門の「あるべき姿」とは?

国際IT資産管理者協会 認定講師/ITIL Expert 武内烈のブログ

そもそもサービスモデルで言われている「ITサービス」とは何か?




意外な
ことに、この共通認識が明確でないままIT業界は「サービスモデル」へと進んでいるように思える。もちろん、大手ベンダーはリサーチ会社との提携や買収な
どにより着実にサービスモデルへの変革を睨みながら垂直統合を行い、サービスの提供能力を強化してきているのだが、多くの水平分業のパートを担っていたベ
ンダーが取り残され気味にバズワードに振り回されながら大手ベンダーの影を追いかけているように見える。




まずは、「サービス」の定義を明確にしたいと思う。


マーケティング マネジメントではバイブルとも称される「コトラー&ケラーのマーケティング マネジメント」では、






サービスとは、一方が他方に対して提供する行為や行動で、本質的に無形で何の所有権ももたらさないものをいう。サービスの生産には有形製品が関わる場合もあれば、関わらない場合もある。マーケティングにおいて、対象となる製品は有形製品を含み、無形のサービス(サービス プロダクト)をも含む。






それでは、ITサービス マネジメントのフレームワークである ITIL (IT Infrastructure Library)の「サービス」の定義はどうだろう。









サービスとは、顧客が特定のコストやリスクを負わずに達成することを望む成果を促進することによって、顧客に価値を提供する手段である。









これらを踏まえて、今までのITの利用者である「顧客」、つまり、ユーザー部門はITとどのように付き合ってきたのかを考えると、その大きな違いが見えてくる。









<ユーザーとITの付き合い方>


・ユーザー部門が必要とするITの処理、能力、期待する結果を要件としてまとめる(IT部門はそれを支援する)


・IT部門が支援し、まとまった要件を実現するためのテクノロジーと、その導入・運用コストを試算する


・ユーザー部門が、試算にもとづいた予算を確保し、発注する


・IT部門が、調達し、または、開発し、システム統合を行い利用可能な状態を構築し、ユーザー部門へ提供し、システム運用のサービスを提供する









簡単に上記にまとめたポイントを含めて現状を解釈すると、ユーザーが所有するIT
テクノロジーがリスクやコスト管理など、本来ユーザーが求めているITによる処理能力と、期待される処理結果を大きく超える負担となることが容易に推察で
きる。これは、一極集中型におけるITでは存在しなかった負担だ。一極集中型では実現が困難だった市場の変化に対応するニーズ「迅速性」を獲得した「分散
処理型」は、複雑なネットワーク環境と構成に起因する所有リスクとコストの上昇によりユーザーの負担を大きく増加させる結果となった。


言い換えれば、ユーザーが変化対応力や迅速性を求めた結果、リスクが増加し、コスト管理が困難になったと言える。変化対応力や迅速性は損ないたくない、できれば向上したい、さらに、特定のコストやリスクは負いたくない、という結果、サービスを志向するようになる。






そんな要求への解として、ユーザーの負担を軽減しつつ、迅速性を維持・向上させるために登場したのが、「サービス指向アーキテクチャ」であり、その実現のために「コンソリデーション(統合)」や「バーチャリゼーション(仮想化)」が進化してきた。


ユーザーが必要とするのは、ITがもたらす処理能力と処理結果であり、ITテクノロジーを所有することで発生するリスクの増加や、コスト管理の能力は、そもそもユーザーが欲するところではない。


つまり、ユーザーが求めるITのサービスとは、「所有権をもたらさずに、特定のコストやリスクを負わずに成果を得る」ことを期待していると言える。


したがって、ITサービスを提供するということは、サービスプロバイダが所有する資産で、リスクを背負い、コスト管理能力を発揮して、ユーザーに成果を提供し、その提供した価値にみあったコストを課金して回収する、と言い換えることができる。