ナポリ中央駅地下



ビジネスへの期待と、

ナポリ男への不安を抱え、


(ようやくナポリに到着だわ・・・)


と思ったのも束の間、

3年半ぶりに訪れたナポリの、
その駅は、

私の知っているナポリ中央駅とは全く異なる
姿となって私を迎え入れた。


イタリアでは駅のホームというのは大体、
地面と同じ高さに作ってある。

もちろん、ナポリも同様であったハズ。


・・が、地下深い到着ホームに降ろされ、
だだっ広いホームの向こう、

一番先頭に地上まで続く
長い長い、エスカレーターが見える。

設備はコンクリート・ステンレスなどを多用した近代構造である。

記憶の片隅にある、古びて雑然としたあの中央駅はどこへ?

(首都ローマ、テルミニ駅がいまだに地ベタのホームだけで
全ての発着をしてるというのに、

ナポリが何故こんな大規模改修を・・・?)


渦中のヒトであり、
ナポリのウェアメーカー社長、
噂のナポレターノ・アントニオとは中央駅の
前で待ち合わせ。
だけど・・・
「そこまで辿り着くのに、どれだけかかるのかしら・・・?」
っていうぐらい、果てしない道のりに思われた。

エスカレーターを上りきった場所にある
自動ゲートをくぐり、思案しながら
現在位置を確認しなきゃ、
と案内板を探して上を見上げていると

グッっと腕をつかむ感触。

「エッ!?」


ナポリに着いたばっかりなのに、いきなりトラブル!?





その腕に感じる力の先に目を向けると・・・


Suzu 「アントーニオォ!!!!!」

アントニオ 「Ciaaaaoooooo!!

             (チャーオ!!!)」


人懐っこい、憎めない笑顔がそこにはあった。
アントニオが迎えにきてくれたのだ。

まるで知らない土地に来てしまったようで

困惑気味だった私は

内心ホッとした。


ナポリに着き、予期せぬ不意打ちを

2度も連続で喰らってしまったが、

そこで落ち着いてはいられない。


一番の問題アントニオなのだ。


アントニオはさっさと車に向かい歩き始めたので

私も会話しながら歩調を合わせたが、

よっぽど動揺していたのだろう。

一度通った道はほとんど記憶する私が

どうやって地上に出たのか思い出せない・・。


私は気を取り直して姿勢を正し、

慎重に言葉を選びながら対応しなければ。

と気持ちを引き締めた・・・。

(次号へ続く)